「みずほ証券誤発注問題『証券5社の手法、美しくない』金融相」云うまでもなく、同感である。

◆記事:みずほ証券誤発注 「証券5社の手法 美しくない」金融相
 

 与謝野馨金融・経済財政担当相は13日の閣議後会見で、みずほ証券の大量誤発注の後に

 日興コーディアル証券など証券5社が自社の資金でジェイコム株を大量に取得していたことについて

 「美しくない」と批判した。

 与謝野金融担当相は「誤発注を認識しながら買い注文を出すことは法的には問題はない」とした上で

 「顧客の注文を取り次ぐのではなく、自己売買部門で間隙(かんげき)をぬって売買するの

 は証券会社として美しい話ではないと思う」と述べた。

 また「証券会社の経営者は行動の美学を持つべきだろう。今回の行動は、

 心温まる『ちょっといい話』を載せた本には決して掲載されない話だ」と注文をつけた。

 (毎日新聞) - 12月13日17時17分更新


◆コメント:色々なディーラーに尋ねてみたが同じ意見でした。

 

 この問題ばかり取り上げるのも、平衡感覚に欠けるきらいがあるが、

 自分がマーケットに携わっていた所為で、どうしても気になるのだ。

 昨日の日記で、野村証券や、日興コーディアル証券、モルガン・スタンレーなど、

 この世界を熟知した人々が、明らかに、みずほ証券の誤注文と分かっているのに、

 平気で大量に買い占め、本日、クリアリング機構による強制決済で、

 各社数十億円の利益を上げるのを、「汚い」と言った。



 奇しくも、金融相は、本日の閣議(毎週火曜日と金曜日には閣議があり、その後、各大臣は記者会見を行うのが慣例である)

 後の記者会見で、記事に引用したとおり、証券五社(これ以外にも、外資系証券会社も大量にジェイコム株を買っているが)

 の行動は「美しくない」と表現した。

 やっぱりね。普通そう思うだろう。

 私は、自分の感覚がおかしいとは思わなかったが、その思いを確認したくて、

 今日は色々なマーケットディーラー(株・外国為替、金利、債券、デリバティブなど)に、

 「今回の騒動についてどう思うか?」とたずねた。

 皆、答えは同じだった。

 「こういう場合、取引は取り消されるべきだ。みずほ証券の注文ミスだと分かっていながら、

 大量の株を購入した証券会社は、マーケットの人間の仁義を分かっていない」というものだった。

 あるディーラーは、

 「ダメだよ。こんな取引はなかったことにしなくちゃ。

 間違いだと知っていて、大手の株屋(証券会社)が買い占めるなんて、とんでもないよ。みっともねえよ。」

 と吐き捨てる様にいっていた。


◆人の不幸に乗じて「儲かった」と自慢するのは下品だ。

 

 Yahoo!掲示板を見ると、「個人投資家」(投資家じゃなくて、投機家だな)が、

 今回の騒動で如何に大儲けしたか、「自慢大会」を繰り広げている。

 実に「下品」だ。こういうのを「人品が卑しい」という。
 この誤注文によって、ミスをした自分が悪いとはいえ、悲惨な目に遭ったであろうみずほの担当者、

 その上司、担当役員、とばっちりを受けた東証の社長、富士通のエンジニアが、

 これから多分、暮れも正月もなく、後始末に奔走しなければならないことなど、想像もしないようだ。

 間違えた人間が悪いと言ったらそれまであるが、

 ジェイコムやみずほのことを誰も全く考えない世の中というのは、冷たいものだ。

 私は、「世の中厳しいのだ」、などと云いたくない。

 そういう気持ちをここ数日ずっと抱いていたので、

 担当大臣が、他人の不幸に乗じてはしゃいでいる「大」証券会社の行動を

 「美しくない」と言ってくれたのは、せめてもの救いだった。


◆「美しくない」という表現を用いる与謝野金融相は与謝野鉄幹・晶子の孫である。

 

 ここからは余談であり本題から逸れるが、かなり興味深いので、自らの覚え書きの意味で記す。

 政治家が「美しくない」というのは、極めて珍しい。

 つまり、否定の助動詞が付いているものの、「美しい」という形容詞を使う政治家は、記憶にない。

 他の代議士なら、せいぜい、「望ましくない」「感心しない」と云うだろう。

 また、「心温まる『ちょっといい話』を載せた本には決して掲載されない話だ」というくだりを、

 「当たり前じゃないか」と云う人。センスがないね。

 こう言うのを「皮肉」若しくは「嫌味」というのだ。

 先般の内閣改造で「与謝野馨」という人物が金融・財政担当大臣になった。

 「与謝野」という苗字は滅多になく、当然、「みだれ髪」の与謝野晶子を連想する。

 知ってますよね?

 「柔肌の熱き血潮に触れもみで悲しからずや道を説く君」


 の与謝野晶子です。

 意味が分からない人は、調べて下さいね。その方が記憶に残ります。

 与謝野大臣のサイトには、与謝野家の人々というページがある。

 この家系図を見ると一目瞭然だが、与謝野金融相はなんと本当に、鉄幹、晶子の孫なのだ。

 ははあ、なるほど。血は争えない。 「美しくない」の起源が分かった気がする。

 やはり文学的才能の遺伝子が組み込まれているのだな、と思った。少し短絡が過ぎるかも知れぬが。

 いずれにしても、この人のプロフィールをWikipediaで読むと、かなり面白い。

 昭和13年生まれで、パソコンを自作する人、しかも政治家は、あまりいないのではないか。

 Linuxに付いても詳しいのだそうだ。


◆閣僚は云うべき時には云わなければならない。

 

 前の伊藤金融相は、40歳を少し過ぎたばかりの、典型的松下政経塾出身優等生トッチャンボーヤで、

 ただひたすら安全運転。

 何を訊かれても、

「個別の問題にはお答え出来ませんので、あくまで一般論として申し上げますが、

 法律の規定にのっとり、適切に措置したいと考えております」と言うばかりだった。

 当たり前だろ?どこの大臣が「法律を破って、不適切に処置したい」と云うのだ!

 記者会見の度にイライラさせられた。

 今回の一件だけで、与謝野金融相を絶賛するほど、私は単純ではないが、

 稀に見る大混乱に乗じて狡いことをする奴が出たときに、

 担当大臣がぴしりと一言発言するのは、結構なことだと思った。


by j6ngt | 2005-12-14 00:49 | 経済


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