郵政民営化、小泉首相に関する素朴な疑問

◆民営化が始まるのは、2007年度からだが、小泉首相の任期は2006年(来年)9月まで。責任取れない。

 

 これは、極めて素朴な疑問である。

 小泉首相は、郵政民営化が自分の政治的信念だというが、仮に自民党が9月11日の選挙で過半数を獲得して郵政法案が成立したとしても、郵政民営化が始まるのは、2007年度からである。

 しかし、小泉首相は来年の9月で任期が切れる。

 小泉純一郎君がいなくなった後、与党が今言っている通りのことを実行することは、全く担保されていない。


◆郵貯と簡保を民営化することにより、多額の資金が民間にまわり、経済が活性化するとは思えない。

 

 日銀はずっと、低金利政策を続けていて、市中銀行に資金は沢山あるが、民間企業はどんどん民間銀行に借入金を返済しており、銀行貸し出し残高は減り続けている。

 要するに、資金の需要がないのである。

 こういうときに、郵貯と簡保を民営化したところで、別にマネーの流れに大きな変化が起きるとは思えない。金融市場を攪乱するだけ迷惑だ。


◆郵政公社4部門を4つの会社にしたら、今よりも多くのひとが必要になる筈だ。

 

 今は、郵政事業は日本郵政公社が運営しているが、2007年から民営化が始まると、郵政公社の四部門、郵便、郵貯、簡保、窓口ネットワークをそれぞれ、独立した別会社にするのである。

 地方の小さな郵便局では、最低限の二人で運営している小さな郵便局が多い。

 四つの部門が別会社になるということは、それぞれの会社の人間が各々の郵便局にいなければならず、余計に人数が増える。

 組織をスリム化するどころか肥大化してしまう。

 民間の発想では「合理化」とは、「統合」することだが、正反対に「分割」してしまうのが、如何にも実際の商売を知らない政治家や役人の考えることだ。


◆民営化したら、収益を自力で上げなければならないが、投資・融資の専門家が郵便局にはいない。

 

 郵貯・簡保は今まで財投にお金の運用を任せていた。

 財投は道路公団や住宅公団に資金を貸し付けて、それが巨大な不良債権になっている。

 そのような不良債権を抱えた状態で、国ではどうしようもないから、民間人何とかしてくれというのは、無責任。

 また、今まで財投に資金運用を任せていた郵貯・簡保は、民間金融機関になるわけであるから、自力で収益を上げなければならない。

 銀行の資金の運用とはまず、融資、それから、金融市場でのディーリング、債券市場(外国の債券も含む)に投資し、または、債権を短期的に保有して売買益を稼ぐ債権ディーリングを行うことである。

 今の郵便局にはだれもそんなノウハウを持った人はいない。収益が上がらず、赤字となり、万が一資金繰りを間違えば、潰れる。

 潰れたら、預金者(郵便局が預かるのは「貯金」だが、銀行は「預金」しか扱えない)が預けた金は戻ってこなくなる。


◆切手:郵便局に取って「債務」だが、発行残高が分からない恐ろしさ。
 

 郵政事業が民営化されたら、郵便切手は「郵便事業株式会社」が発行する。

 こういうものを民間事業にしてよいのか。

 というのは、切手というのは、窓口に客が来たら、必ず売らなければならない。ところが、これが全部使われるとは限らない。

 切手を郵便局の窓口に持っていって払い戻してくださいといわれたら、断れない。つまり、郵便事業株式会社にとって「債務」なのだが、勿論現在までに、莫大な量の切手が発行されているわけである。

 切手が何故問題かというと、通貨(お金)や国債と違って発行残高が分からないのである。

 そんなものは大した額じゃないだろうというのは、とんでもない話で、バブルの景気の良いときには、企業がもの凄い量を買ったのである。

 何故なら、切手を購入した場合、これは「経費」と見なされるので、節税の一手段となったからである。

 この、不気味な「債務」。一体いくらあるか分からない債務を郵政公社は抱えている。

 民営化したあとで、潰れたら大変だから、その前に換金しておこう、と各企業が考え、一遍に持ってこられたら、一体どうなるのか。

 下手をすれば一瞬にして資金繰りに窮して潰れるかも知れない。

 このように、「債務がいくらあるのか分からない」というとんでもない状態、いわば、「爆弾を抱えた状態」の金融機関を民営化するのは、あまりにも危険である。


◆年金:国会議員年金は結局存続するのですか?

 

 「聖域なき構造改革」なんて小泉首相は調子の良いことを言うが、それならば、まず、国会議員から範を垂れるべきではないかと思う。

 自民党はマニフェストで、この点について言及していない。民主、公明は廃止と書いている。

 国会議員を10年務めると、国会議員年金がもらえる。議員を辞めた後、65歳から支給される。最低でも年間412万円(一ヶ月34万円)である。

 そして、在職年数が10年を超えると、1年につき、年間支給額が8万円ずつ増える。

 したがって、例えば、20年つとめたら、412+8×10=492万円(月額41万円)も、支給される。この財源の7割は国民が納める税金である。

 小泉首相は、郵政改革だ!と叫んで、あと一年経ったら首相も辞めて、なんなら国会議員を辞めても悠々自適なんです。

 こういうのを、「聖域無き構造改革」というのだろうか?

 以前、この日記でも書いたが、大手商社、伊藤忠商事の経営再建に取り組み見事成功を収めた丹羽社長は、社長就任後、1年半も無給で働いた。

 そして天下の伊藤忠商事の社長が社長車の送迎を辞めさせ、毎日、一般社員と同じように徒歩と電車で通勤した。電車通勤は今でも続いている。

 トップがこういうことをしたら、皆一生懸命になりますよね。

 小泉さん、わかります?


by j6ngt | 2005-08-25 00:15 | 郵政民営化


<< 「郵政、郵政と言われて、拉致... 小泉政権における金融行政の不備... >>