◆記事1:豚インフルで課長級会議を緊急開催へ=政府、情報収集に努める(時事通信社 - 04月25日 13:01)
政府は25日午前、メキシコ国内で豚インフルエンザの人への感染が疑われる症例が相次いでいることを受け、
全省庁の課長級による会議を午後1時から内閣府で開催することを決めた。感染が拡大すれば日本国内への影響が避けられないことから、
今後の対応を早急に協議する。また、首相官邸の危機管理センターに情報連絡室を設置し、情報収集に当たった。
これに関し、政府高官は同日午前、世界保健機関(WHO)がメキシコでの豚インフルエンザウイルスが
「人から人へ感染する」新型と宣言した場合、麻生太郎首相を本部長とする対策本部を設置することを明らかにした。
(注;太文字は引用者による)
◆記事2:米・メキシコ豚インフル、ウイルス「同一」 米当局が解析 (NIKKEI NET)(11:56)
【ニューヨーク=中前博之】米疾病対策センター(CDC)は24日、人から人へ感染する
新型の豚インフルエンザウイルスによる症例が米国内で計8件見つかったと明らかにした。
患者はいずれも軽症だったが、初期解析では重症例が多いメキシコの患者から採取されたウイルスと「同一」と判明。
国境を越えた感染拡大が確認されたことを受け、米当局はワクチン開発の準備も含め、警戒を強めている。
メキシコ保健当局は同日夕、豚インフルエンザの疑いがある患者は1000人を超え、死者は68人に達したと公表。
日本政府によると世界保健機関(WHO)は感染状況を評価するため、世界の専門家で構成する緊急委員会を日本時間の25日夜に開く。
CDCによると、見つかった症例はメキシコと国境を接する西部カリフォルニア州で6件、南部テキサス州で2件。
感染者で豚に接触した人がいないうえ、親子や学校の同級生など身近な環境にある患者がいることから、
当局者は「人から人への感染だと信じている」としている。 (11:56) (注;太文字は引用者による)
◆記事3:<豚インフル>新たなウイルスに変異の可能性 専門家の見方(4月25日12時56分配信 毎日新聞)
メキシコでの豚インフルエンザの感染者拡大で、
人から人への感染力を持つ新たなウイルスに変異している可能性が出てきた。
新型インフルエンザの脅威が高まる中、ウイルスの特徴や必要な対応を専門家に聞いた。
今回のウイルスは、H1N1型。現在も冬に流行するAソ連型と同じ型だ。
このため、世界中の人がこの型のウイルスに対して免疫を持つ。この点が人が免疫を持たない型(H5N1型)の鳥インフルエンザとは異なる。
またH1型のウイルスは、強毒性のH5型に比べ毒性が低い。
喜田宏・北海道大教授(ウイルス学)は「Aソ連型によって、ある程度免疫を持つ人は多い。
豚インフルエンザだけではなく、他の型のインフルエンザウイルスや細菌などとの同時感染だった可能性もある」と話す。
一方、死亡率の高さから大槻公一・京都産業大鳥インフルエンザ研究センター長(獣医微生物学)は
「従来の豚インフルエンザの範ちゅうを超えており、これまでにないウイルスになっている可能性がある。
H5N1型に限らず、別の型でも鳥から豚に感染し新型インフルエンザとなって感染が広がる可能性がある」と話す。
田代真人・国立感染症研究所ウイルス第3部長は「人と豚のインフルエンザでは重症度や感染力が異なり、感染拡大の可能性はある」と警戒を求める。
(注;太文字は引用者による)
◆コメント:かなり緊迫した状況で、新型ウイルスに変異した場合、世界中の人間の生命に関わる、ということです。
事態の重要な点を整理します。
メキシコでは、豚インフルエンザに感染した疑いがある患者は1000人を超え、死者は68人に達しています。
「現在確認されている」豚インフルエンザウイルスは、「H1N1型」で既存のウイルスです。
従って、これに対して免疫を持っている人が多い筈ですが、メキシコでは現実に68人が死亡しています。
アメリカでも豚インフルエンザよる症例が8件見つかっています。アメリカの患者は軽症でしたが、
感染したウイルスは、メキシコで死者が出たのと同じ型です。
アメリカの8人の患者は、豚と接触していないのに発症しています。
したがって、豚インフルエンザが「ヒト-ヒト」感染したことはほぼ明らかです。
専門家の見解は分かれますが、記事3で大槻公一・京都産業大鳥インフルエンザ研究センター長は、
従来の豚インフルエンザの範ちゅうを超えており、これまでにないウイルスになっている可能性がある。
との見解を表明しています。
現在の豚インフルエンザが変異して容易に「ヒトーヒト」感染する新型ウイルスが確認された場合、
今までにないウイルスですから、誰も免疫を(正しくは、ウイルスに対する抗体を)持っていません。
予防するためには、ワクチン接種が必要ですが、ワクチンというのは、ある病気の病原体を薄めたものを
わざと打つことにより、軽い病気にして、人間の持つ免疫機構を利用して、体内にその病原体に対する抗体を
作るものです。
したがって、原理的に考えて、新型インフルエンザのワクチンは新型インフルエンザウイルスが発生し、
それに感染した患者が出なければ作れません。作るといっても開発に何ヶ月もかかります。
開発に成功しても、世界中の需要を満たすためには、製造に時間がかかります。
さらに、ワクチンというものは、接種した瞬間に体内に抗体ができるわけではなく、
普通、抗体が出来るまでに1~2週間はかかります。抗体が体内に出来るまでは、感染の危険があります。
発症した場合、既存のインフルエンザウイルスの特定の型には、抗ウイルス薬、タミフル、リレンザが
有効ですが、新型インフルエンザに対しても有効である保証はありません。
感染発症したら、治療も出来ない可能性が極めて高い、と言うことです。
つまり、新型インフルエンザウイルスが確認された場合、
世界中の人に生命の危険が訪れるといっても過言ではありません。
だから、WHOは今日(25日)世界中から専門家を集めての緊急会議を開くのです。
◆ヒトーヒト感染するウイルスが確認されたかどうかWHOの判断はどこで確認すれば良いか。
記事1に、
政府高官は同日午前、世界保健機関(WHO)がメキシコでの豚インフルエンザウイルスが「人から人へ感染する」新型と宣言した場合
麻生太郎首相を本部長とする対策本部を設置することを明らかにした。
とあります。
WHOは新型ウイルスが発生し、ヒトからヒトへの感染が増加している局面をフェーズ4と規定しています。
それは、WHOのサイト、
WHO | Current WHO phase of pandemic alertを見れば明らかです。
英語のサイトですが、英語を読む必要はありません。
現時点(2009年04月26日(日)00時14分)リンク先を見ると、3に○がしてあります。
現在はフェーズ3、「ヒト-ヒト感染が無い。又は非常に限られている」ということです。
WHO | Current WHO phase of pandemic alertで○の位置が3から一段階下がって、
4に○が付いたら、超緊急事態、と見なすべきです。新型インフルエンザウイルスがヒト-ヒト感染し、患者が増加している、
ということだからです。ここは毎日確認する必要があります。
前述のとおり、新型ウイルスの抗体は世界中誰も持っていない。
ということは、誰が感染しても不思議は無い。周囲で一人でも感染したら、
爆発的に感染者が広まり、貴方も私も感染の危険に晒され、運が悪ければ、
死ぬかも知れない。徒に脅かしているのではなく、リスクコントロール(危機管理)とは、
常に、最悪の事態が起きる可能性を考えることに、他ならないのです。
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