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「探査機はやぶさ:イトカワ岩石採取」←日本から、サンパウロの5㎜のハエを打ち落とす精度だそうです。

◆記事:探査機はやぶさ:イトカワ岩石採取 「最大の山越えた」--JAXAが会見

 

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は26日、探査機「はやぶさ」について、

小惑星イトカワの岩石採取のための一連の指令が出されたことを確認したと発表した。

プロジェクトを率いる川口淳一郎・宇宙科学研究本部教授は「試料(岩石)は採取できたと考えている。一番大きな山は越えた」と述べた。

 JAXAは、はやぶさが取得したデータを解析。20日に続く2度目の着陸が確認された。

 また、岩石採取量を増やすため、残っていた金属弾2発を連続して発射した。

 はやぶさはイトカワから上昇中、姿勢制御に使うガス噴射エンジンに不具合が発生したため、

 26日午後に姿勢を安定させる安全モードに入った。毎日新聞 2005年11月27日 東京朝刊


◆コメント:地上のゴタゴタをしばし忘れて・・・

 

 ここのところ、新聞を読むと、事件、事故、犯罪、不祥事、等々が多すぎて、何から書いて良いか分からない。

 書こうとすると、うんざりします。特にここ1週間ほど、ひどい。

 仕事から疲れて帰ってきて、人間の悪行を取り上げて文章を書くのが、どうしても嫌な時があります。

 今日もそういう状態なので、明るい話題を取り上げました。


◆JAXAのサイトは面白いですよ。

 

 上の記事に出てくるJAXAのサイトを一度見て下さい。

 探査機「はやぶさ」が「イトカワ」からどのような方法を用いてサンプルを採取したのか、

 「タッチダウン」(着地)と題した動画で見ることができる。大変分かりやすい。

 また、「はやぶさ」のいちばん長い日という、この計画の責任者が書かれた一文は、

 やや専門的に詳しいことまで書かれていますけれども、日本有数の頭脳集団が、

 如何に苦心惨憺の末、この偉業(人類史上初めて、小惑星のサンプルを採取すること)を達成したのかが、窺えます(素人が簡単に「分かる」とは言えません)。

 20日、一度目の着陸に失敗した、というか、暫くはやぶさを見失ったときは、一時、「もうダメか」、という感じだったらしいのです。

 ところが、実は、はやぶさが自ら危険を察知して上昇していた、それから、技術者達の懸命の努力の結果、

 25日に再び降下して、結局サンプル採取に成功したというのです。

 現場の人たちのその間の緊張と苦労は並ではなかったようです(くどいけど、私には「ようです」としか書けない)。



 第一回目の着陸の少し前、11月18日の日記でも書きましたが、

 小惑星イトカワは、地球から3億キロ離れたところにある。

 これは、光ですら、到達するのに17分もかかる距離なのですが、3億キロとか言われてもピンときません。

 どこかに分かりやすい説明はないかと思ったら、毎日新聞が上手く説明してくれています。

 3億キロ離れたところにあるイトカワに(その他にも何万個、何十万個という小惑星があるわけです)狙いを定め、 タッチダウンするというのは、

 「東京から2万キロ離れた、つまり地球の丁度裏側のサンパウロを飛んでいる5㎜のハエを打ち落とす」ことに匹敵する精度なのだそうです。

 何だかそれでも話が壮大すぎて、頭の悪い私には良く分からない。



 ただ、これだけは、いえます。

 当たり前なのですが、日本人は、強度を偽った建物を建てて、他人様に売って平気なイカサマ野郎ばかりではない。

 信じられないほど優秀で、世界に誇る知能を持ち、真理の探究に貢献している人々もまた、日本人だ、ということです。


by j6ngt | 2005-11-29 01:29 | 科学

「悪者探しは景気悪化招く 耐震偽造問題で武部氏」←感動的なバカさ加減。

◆記事1:悪者探しは景気悪化招く 耐震偽造問題で武部氏

 

 自民党の武部勤幹事長は26日、北海道釧路市で講演し、耐震強度偽造問題に関して

 「悪者探しに終始すると、マンション業界つぶれますよ、ばたばたと。不動産業界も参ってきますよ。

 景気がこれでおかしくなるほどの大きな問題です」と述べた。

 自らが農相当時に牛海綿状脳症(BSE)問題への対処で批判されたことを引き合いに

 「対応を気を付けないといけない。寝られないでしょう、大きい地震が来たら自分のマンションがつぶれるという話ばかりされると」と指摘した。

 また、武部氏は記者団に対し、伊藤公介元国土庁長官が偽造問題発覚前に、

 マンション販売業者「ヒューザー」社長を国土交通省幹部に紹介したことについて

 「事実なら誠に不用意極まりない」と語った。(共同通信) - 11月26日19時6分更新


◆記事2:<自民政調会長>耐震偽造「建築主に全面的責任」TVで強調

 

 自民党の中川秀直政調会長は27日、フジテレビの報道番組で、耐震データ偽造問題について

「どの建設会社やどの構造計算の事務所に設計依頼するかも含め、全面的に建築主に責任がある」との認識を強調した。

 その上で「(建築確認という)公の事務がかかわっており、行政に法律上の責任がどこまで課せられているか検討する」と述べ、

 再発防止に向けて、行政側の責任も追及していく考えを示した。(毎日新聞) - 11月27日19時24分更新


◆記事3:「大記録、見事だ。おめでとう」=小泉首相、朝青龍関に杯授与

 

 小泉純一郎首相は27日午後、福岡市を訪れ、大相撲九州場所で前人未到の7連覇を達成した横綱・朝青龍関の表彰式で土俵に上がり、

 直接内閣総理大臣杯を授与した。

 型通りの表彰状を読み上げた後、首相はアドリブで「新記録、大記録、見事だ。おめでとう」とたたえ、朝青龍関も笑顔を見せた。

 この後、首相は記者団に「歴史に残る名横綱になったんじゃないですか」と絶賛。

 2001年の夏場所での横綱・貴乃花関(現親方)以来の総理大臣杯手渡しに、

 「(あれから)4年半なんだね。あのころ、朝青龍があんなに強くなるとは思ってなかったね」と振り返った。

 ただ、外国人力士の活躍ばかりが目立つことには「もう少し日本人に強くなってもらいたいね」と奮起を促した。(時事通信) - 11月27日21時0分更新


◆コメント:どいつもこいつも・・・・。

 

 武部がバカなのは、日本人の常識であるが、ここまでバカだと、こちらが気絶しそうになる。

 「悪者探しに終始するとマンション業界がつぶれる」ことのほうが、

 「マンションそのものが崩壊して、その住民の生命が失われること」よりも深刻であるらしい。

 これ以上、何も書きたくない。情けない。



 中川政調会長は一昨日日銀の金融政策の件で触れたが、

 日銀が政府の意向に沿わないようなことをするなら、日銀法を改正する、と、中央銀行の独立性を、軽んずる発言をした。

 確かに日銀法4条というのがあって、政府の基本政策と協調するように、と書いてあるのだが、

 政府が何ら有効な景気回復策をとらないから、日銀が苦労しているんじゃないか。

 国が税金の無駄遣いを減らし切れず、その責任はとらず、増税を考えている事のほうが余程問題なのだ。

 量的緩和策を続けろ、といいながら、与党は定率減税の廃止、即ち増税を決めた。

 景気回復をじゃましているのは、お前ら政治家なんだよ。バカ。

 で、その中川が、耐震データ偽造問題は全部民間の建築士の責任だという。

 何のための監督官庁なのだ?

 民間の検査機関が検査をしたというが、その検査機関が、妥当性のある検査を行っているか確かめるのは行政の責任だ。

 だから、究極的には、行政府たる内閣にも大いに責任がある。

 その行政府の長、小泉純一郎内閣総理大臣は、これだけ、世間が大騒ぎになっているときに、わざわざ九州まで飛んで、相撲見物だ。

 小泉政権はバカの集団だ。


by j6ngt | 2005-11-28 02:55

「バイオリニストは肩が凝る」(鶴我裕子 NHK交響楽団第1バイオリン奏者 著)←面白すぎる。

◆小学生の頃からオーケストラの音楽家に憧れてきた

 

 「崇拝」に近いです。

 オーケストラの音楽にあまりに感動したため、オーケストラを構成するひとりひとりの音楽家は、

 私にとって、「神様」に等しい存在であった。今でもその思いに大きな変わりはない。

 何故か、ソリストにはあまり興味が無かった。

 とにかく、「オーケストラで演奏する音楽家」が。私にはこの世で最も偉大な存在だった。



 当時、自宅のそばの杉並公会堂という汚い、小さい会場で、東京都交響楽団(都響という)や、

 東フィル(東京フィルハーモニー交響楽団)が、ファミリーコンサートをやってくれた。

 500円で聴けた。土日のマチネー(昼間のコンサート)が多かった。

 杉並公会堂は小さい建物だから、コンサートが終わった後、裏側の道で待っていると、

 オーケストラの楽員さん(=神様 for me)が、ぞろぞろと楽屋から出てきて、帰途につく。

 クルマを停めるスペースが十分に無いし、すぐ近くが中央線の荻窪駅なので、神様たちが歩いて駅に向う。



 私は引っ込み思案の気の弱い子供だったが、どういうわけか、この時ばかりはもの凄い行動力を発揮した。

 小さいスケッチブックと、フェルトペンをあらかじめ用意しておく。

 サインをもらうのである。神様という割にはなれなれしいが、理屈ではない。

 そして楽器を持った楽員さんに片っ端から、サインしてください、とねだった。

 トランペット奏者も、コントラバス奏者も、帰りに八百屋で、大根を買って、

 バイオリンケースと一緒に持っている女性の楽員さんもいた(私はそんなことはどうでもよいが、今にして思うと、あの方はすこし、恥ずかしかっただろう。悪いことをした)。

 ただ、私にとっては、大根を持っていようがいまいが、関係ない。

 クラシックの音楽家は今でもカネが欲しくて出来る商売ではない。当時はもっとギャラが少なかっただろう。

 大抵の音楽家は(今から思うと)粗末な身なりをしていた。

 それも、私には、関係が無かった。オーケストラで演奏しているプロの音楽家から、サインが貰える。

 子供の私の胸は喜びではち切れそうであった。



 ときどき、「ついでに」などと言っては失礼なんだけど、指揮者のサインも貰った。

 ある時はコバケン(小林研一郎という、日本のクラシックのガクタイなら知らない人はいない、指揮者)にサインを貰った。

 恐縮するほど丁寧な方だった(音大では学生に厳しいので有名なのだ)。

 そして、何と、故・渡辺暁男先生にもサインを頂戴した。

 コバケンは芸大の指揮科卒で渡辺暁男先生の弟子。渡辺先生といったら、なにしろ、岩城宏之や、山本直純が芸大で習ったような方なのだ。

 渡辺先生は子供の私を「演奏会を聴きに来てくださったお客様」として扱ってくださった。

「サインですか?字が下手なのですがよろしいですか?」と。



 ああ。今から思うと、無礼、失礼、無恥、厚顔。恥ずかしい。 



 勿論、私も何十年も生きて、人並みに人の世の醜さを散々味わった。

 だから、ゲージュツカとて、立派な人格の持ち主とは限らないこと、それどころか、嫌な奴も多いこと。

 オーケストラの内部でも時に勢力争いとか、新人イジメなど、醜い人間の営みがあることを知っている。 

 しかし、「憧れ」は理屈ではない。

 その頃、サイン帳にした、小さなスケッチブックは、棺桶まで持ってゆくつもりだ。

 私の唯一、かつ、絶対無二の、永遠の宝物だ。


◆「バイオリニストは肩が凝る」(鶴我裕子 NHK交響楽団第1バイオリン奏者 著)

 

 N響の現役第1バイオリン奏者を30年も務めておられる鶴我さんは、そのような神様の見本のような方だ。

 N響のステージで何百回、お姿を拝見したか分からないが、これほどウィットとユーモアと、

 ロマンチシズムに満ちた文章をお書きになる方とは知らなかった。

 今回紹介するのは、バイオリニストは肩が凝る―鶴我裕子のN響日記だ。

 誤解を恐れずに言うと、これは、あたかも私のために書かれた本ではないかと思うほど、隅から隅まで面白い。

 アマチュア・オーケストラで演奏するような方は勿論、楽器が弾けない人が読んでも、オーケストラに少し興味がある人、

 最近、興味が出てきた人、あんまりクラシックって聴いたことが無いんだけど、という人が読んでも、多分、面白い。



 N響の第1バイオリンというのは、日本のオーケストラバイオリンプレーヤーで一番上手い人たちであると考えてください。

 第1バイオリンはオーケストラの心臓部です。

 そこで30年間もの間、現役プレーヤーとして弾いて来られた鶴我さんは、オーケストラの酸いも甘いも、ウラも表も知り尽くした大ベテランだ。



 若い指揮者が初めてN響を振るときなど、これほど怖い人はいないだろう。

 経験の無い指揮者などよりも、実際に音を出す奏者の方が、殆どの曲に関して、よく知っている。

 若手に限らず、初めてN響を振る指揮者が来たときに、オーケストラが思うのは

「頼むから、せめて(演奏の)邪魔をしないでくれよな」ということだそうだ。

 下手にいじらないで欲しい。そうすりゃ、上手く弾いてやるから、ということだ。

 そういう、オーケストラの音楽家の本音が書かれていて、私には、ちょっと危ないほど面白い。

 この本を読んでいる最中に火災が発生しても、焼死するまで気がつかずに読み続けそうな気がする。


◆一部抜粋(ご容赦!)「譜読みを楽しむ方法ってある?」より

 

 「譜読み」

 知らない曲や新作を、リハーサルの前に家でおさらいすることを「譜読み」といい、オーケストラ人生の大部分は、これでつぶれる。

 「練習」というのは、もう知っている曲のホコリを払ったり、みがきをかけていくことなので、「譜読み」ではない。

 バイオリン・パートの譜読みは特に大変で、いつも細かい音符を弾かされっぱなし、

 そのうえ音域が高いので目立つし、大曲になると50~60ページもある。

 それを、始めの音から手探りで弾けるようにしていくのだ。もうイヤンなっちゃう。おもしろくもナーンともないですよ。

 たとえ、通して弾けるようになったって、それは全体の一部分でしかないので、美しくもカッコよくもナーンともない。

 だから、表紙をめくる前からたいていのプレーヤーは「あーあ」とため息をつく。

 最後のページにたどりつくまで、いったいどのくらいかかるやら。

 そのうえ、こんなヘンな曲、もう2度とやらないかもしれないのに、やれやれ・・・。

 仲間に「譜読みを楽しむ方法ってある?」と聞いても、「ないっ」「あるわけねーだろ」と、返事は決まっている。

 そうだよな。どうして無理に楽しもうとするんだろう。例の「ポジティヴ思考」ってやつね。

 あれは二重に自分を疲れさせないだろうか。「笑う介護」とか、「おいしいダイエット」とか。

 友よ(オー・フロインデ)、おもしろくなければ、「おもろなーい」とわめくべし(ニヒト・ディーゼテーネ)。



 で、だいぶ前から、私の譜読みは、以下のスタイルに落ちつきました。

 まず、近所の公園をひと回りして、よその犬などをなでて帰り、おいしいお茶を飲む。

 次に自室のタタミベッドの上にコタツをセットしてスイッチを入れ、上にバイオリン・ケースを置いて楽譜をたてかける。

 むこうのカベにあるテレビをオンにする。テレビは相撲が一番都合がいいけれど、

 アニメ「ルパン三世」や、ワイドショーでも可。音はしぼってコタツに足をつっ込み、うしろのボードにもたれて楽器をアゴにはさむ。

 大声で「あ~あ」と言ってから、最後のページの始めの音から、切りくずしていくのだ。

 フレーズも速さも無視する。とにかく、その音に指がいくようになったら、ひとつ前のページへ。

 途中、相撲が時間いっぱいになったら、弓を持ったまま口をあけて取組を見る。

 そうやって2時間もたつと、アラ不ふしぎ、表紙が見えてくるではないか。

 もちろん、まだ弾けちゃいませんよ。でも、きょうはこれでいいのだ。

 「1日の苦労は1日にて足れり」と、イエス様もおっしゃった。

 目は疲れたけど心は疲れていないし、筋肉もまあまあだ。立派な音をたてていないので、近所迷惑にもならない。

 おまけに相撲の勝敗まで知っている。

 え?楽屋でサインをもらう気がなくなった?そうでしょ。ウラなんて、こんなもんです。美化するのはやめましょう。


◆コメント:ハハハハハ・・・・

 

 これは、読む人の音楽的体験によって随分受け取り方が違うでしょうね。

 真面目な方は、「なんたる怠惰な」と思われるでしょうが、違うんですねえ。

 まず、譜読みと言っても、音楽家は子供の頃からソルフェージュといって、楽譜を読む訓練をしているし、

 絶対音感があるから、譜面を見れば、楽器で音を出さなくても、

 自分のパートが出す音(メロディーのこともあるし、タタタタタ・・・という「刻み」の時もある)は、ほぼ完全に頭の中で鳴らせるのです。

 音を出してみなくてはどんな曲か分からないというような人は素人なら構わないけど、プロには絶対になれません。

 ただ、音は分かっても、その通りの音を自分の楽器で出すためには、バイオリンならどの指でどの弦を押さえるか。

 この音では、右手の弓の速さはどの程度にするか。というような「動作記憶」にしなければならない。

 それが面倒くさいのです。



 これは、しかし、みんないうのです。

 私のような素人が譜読みを面倒だと感じるのは、才能がないから当たり前だけど、散々訓練を積んだプロでも面倒なのね。

 以前、ピアニストの清水和音(しみずかずね)氏が、このひとは4歳でショパンの「幻想即興曲」を弾いたと言うほどの天才なのに、

 やはり、譜読みはいやだなあ、と言っていましたね。

 もう亡くなったけど、20世紀最高のピアニストの一人に、アルトゥール・ルービンシュタインというお爺さんがいました。

 冗談ばかりいうひとですが、これほどの巨匠でも、同じ事を言う。

 「年を取ると言うことは素晴らしい。「譜読み」をしなくていい」。

 それほど、面倒なものなんですね。

 だから鶴我さんも「あーあ」と言ってからじゃないと始められない。


◆50ページの譜読みを2時間・・・ね。

 

 そうは言っても、さすがに鶴我さんは一流のプロであることがわかります。

 上の文章を読むと、要するにバイオリンパート50ページの譜読みを2時間で一通り済ませているわけです。

 素人と比べるのは失礼というものだが、アマチュアなら、一ヶ月はかかるでしょう。

 どうして鶴我さんが2時間で出来るか?

 基礎を固めた上で身につけた高度なテクニックを学生の頃に習得しているからです。

 そのために、子供の頃から毎日何時間もの、累計にしたらもの凄い量の練習をして来たからです。

 鶴我さんは、バイオリン始めたのが何と10歳なんです。

 今じゃ考えられない。3歳か4歳で始めるのが普通。

 しかも鶴我さんのご出身は山形。東京のように有名な大先生がいたわけではない。

 芸大合格までの苦労はもの凄かったと思います。



 音大に入るには、バイオリンだけ弾ければいい、というわけではないのです。

 「聴音」といって、ピアノで弾いた旋律をそのまま楽譜に書き取る。大抵2回しか弾かない。

 聴き取れなかったり、忘れたら、アウト。しかも単旋律ではない。

 バイオリンはどうなんだろ。4声の聴音かも。つまり4つのパートを同時に聴き取ってその場で譜面にする。

 少なくとも作曲科や、指揮科の試験では4声が当たり前。

「ソルフェージュ」。読譜力の試験。楽譜を渡されて、その場で歌う。

 途中で転調していたり、音部記号がト音記号から、ハ音記号とかヘ音記号に変ったり、わざと意地悪に作られている。

 「楽典」。和声進行とか、楽譜を見て調性を書けとか。

 調性なんて簡単そうだが、2つの調性のどちらにも取れそうなのがある。それを、前後から推論して特定せよ、という。

「ピアノ」。音大に入る人は、何の楽器を専攻していても(声楽でも)、ソナチネ(ソナタの簡単な奴)程度は弾けなければいけない。

 バイエルでOKというわけにはいきません。たとえ、打楽器専攻でもね。


◆とにかく面白いです。おすすめCD

 

 きりがないから、この辺にします。

 折角だからおすすめCDですが、鶴我さんはオーケストラプレーヤーだから、ソロレコーディングはしていないです。



 私は昨年10月8日に、ベルリンフィルのコンサートマスター、安永徹さんが如何にすごいかと言う話をかきましたが、

 鶴我さんが同じ事を書いている。

 

「コンマス(コンサートマスター)と言えば、何がすごいって、日本人がベルリン・フィルのコンマスになったぐらいすごいことはない。」


 プロから見てもすごいんですよ。

 その安永さんが奥さんのピアニスト、市野あゆみさんと録音しているCDが何枚もあります。

 デュオ・コンサーって、これ、4週間か。

 品切れじゃないと良いのですが。

 私はバイオリンのソロっていろんな人の聴きましたが、安永さんが一番好きです。

 もの凄い美音。溢れる音楽性。

 冒頭のコレルリのソナタなんて、地味な曲だと思っていたけれど、

 安永さんの手にかかると、生まれ変わったように美しい。これぞ、芸術家の真骨頂。本当に名人。

 誰も、なかなか分かってくれないので悔しいのだけど、安永さんがベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターを22年も務めているということは、

 間違いなく、日本の誇りなんです。これだけでも、日本人で良かったと思います。

 このCDに収められているのは、間違いなく、超一流の音楽家による、超一流の演奏です。


by j6ngt | 2005-11-27 03:30 | 音楽

体調不良の為、本日休みます

◆メール、コメント、ありがとうございます。

 

 ここ数日、「『イトカワ』に着陸する『はやぶさ』」の他、「ボレロ」に関して、

また昨日の稿について、リンク、ご感想のメール、コメント等、誠に有難うございます。

 未だに返信出来ず、申し訳ございません。少々、体調が悪く本日は無理ですが、

 近日中に必ず、レスをお送りいたします。

 今暫くご猶予を頂きたく、お願い申し上げます。


by j6ngt | 2005-11-25 00:19 | クラシック

日本人は、ネット上のみならず、現実世界で、もう少し声をかけた方がよいのではないか。

◆バーチャル・ワールドと現実世界との最大の違い。

 

 私の「感覚」では、2年ぐらい前からちらほらと「ブログ」という言葉が日本語に定着して、その頃から、もの凄い数の日本人がブログを開設している。

 ブログにおいては、わざわざ開設するぐらいだから当たり前といってしまえばその通りだが、

 皆さん内容は千差万別だが、誠に雄弁だ。

 私は、日本人は実はこんなに世間の目に触れることを承知で、何かを主張したかったのか、ということに驚いた。

 それは、原則的には悪いことではないと思うのであるが、人間、仮名で(匿名と仮名は違う)、文字だけなら、目の前には誰もいないので、何でも言える。

 しかし、ネットの世界だけではなく、現実世界でも、もう少し日本人は、「お互いに声をかける習慣」を身につけても良いように思う。


◆実例1:電車で隣の人が落とし物をして、下車しているのを知りながら、何もしない若者。

 

 若者だけではないが、日本人は公徳心が足りないように思われる。

 以下、私が電車の中で実際に目撃した事実である。

 私の目の前に大学生と見られる若い男性と女性(互いに知り合いではない)が隣合わせで座っていた。

 男性は、ある駅で下車したのだが、その直前バッグから何かを取り出し、その拍子にハンカチか何かを床に落としたのである。

 それは、目立つ色で、周囲の人は皆、彼が物を落としたことに気がついている。

 隣の女の子も気がついている。

 私はこう言うときには、ごく普通のこととして、「何か落ちましたよ」と電車の中でも知らせる。

 特別に偉いことでも何でもなく、ごく自然なことだと思うのである。

 その時は、私が言うまでもなく、すぐ横の女の子が教えてやるだろうと思った。

 ところが、である。なんと。女の子は何も言わないのだ。

 落としたハンカチは女の子の真っ正面に落ちている。書き忘れたが、男性は特に気持ちの悪い人物、怪しげな人物ではなかった。

 女の子は気がつかないフリをして視線を水平に向けているが、気がついていることは、誰がみても明らかなのだ。

 どうして「落ちましたよ」とか、「これ、落としましたよ」ぐらいの一言が出ないのか?

 そうしている間に電車は駅に停車し、ドアが開き、男子学生は落とし物をしたことを気がつかずに降りてゆく。

 私は、あわてて、落とし物を拾って彼に渡した。

 周囲の日本人は、その一部始終を見ているのに、気まずいのだろうか?

 その一部始終すら気がつかなかったようなフリをして、雑誌など読んでいた。


◆実例2:電車が終点についたのに眠っている人は、起こしてやっても良いだろう。

 

 これに関しては、やらない言い訳を色々と考えることは出来るかも知れぬ。

 「眠っている男が実は凶暴で、起こしてやったのに、いきなり怒り出して、殴られるかも知れない」とかね。

 しかし、少なくとも、私はそういう経験をしたことが無い。



 この季節、東京はかなり寒く、電車内の暖房が使われ始めた。

 どなたもご存じのとおり、電車のあの、ほどよい揺れは、人間に眠気を催させる。

 その上、本人が仕事や学校帰りで疲れていて、電車の中が暖かいと、かなりの人が「熟睡」してしまう。

 終点に到着して車内放送があったぐらいでは、目が覚めない。 放っておけば、電車は数分以内に、逆に発進する。

 実は、私がこれを何度もやっているのだ。

 私は、帰宅するときには、会社のそばのXという駅から乗って、終点のY駅で降りるのだが、ときどき殆ど「昏倒」していて目が覚めない。

 その結果、逆に発進しても目が覚めず、なんと、XとYの中間ぐらいのところまで、逆戻りして、漸く目が覚める、というケースである。



 帰途であるから、別に帰宅時間が少々遅くなったところで、問題はない。

 無いけれども、私は、終点で目が覚めないでいる人というのは、大抵見れば明らかなのだから、

 誰か起こしてくれても良かったのではないか、不親切だな、と思った。

 それ以来、私は、終点で明らかに目が覚めず、放っておけばどこまで逆戻りするか分からないと思われる人を見かけるた場合、

 軽く揺すって、「着きましたよ」と声をかけることにした。

 大抵、というか、ほぼ100%、感謝される。

 誤解されると困るのだが、私は、感謝されるためにやるわけではない。それぐらいしてもいいじゃないか、と言いたいのだ。

 そもそも、感謝する前に大部分の人は数秒間寝ぼけているので、こちらはその間にまた眠りそうにないことを見届けて、消える。

 本人が確実に起きるまで、相手の目の前に立って待っているのは、何だか変だ。


◆こういうところは、イギリス人の方がスマートだ。

 

 以上述べたようなことを強く意識するようになったのは、英国に駐在してからである。

 あちらに住んでおられる方、住んだことがある方はよくご存じだと思うが、

 欧米人は見知らぬ者同士でも、気軽に"Thank you." と例を言い、言われた方も"No prob(lem)" "OK"と返事をする。

 例えばビルの入り口。向こうは自動ドアが意外にすくない。開けて、手を離したら元に戻る、旧式のドアが多い。

 この場合、ドアを押し開けて、手を離す前に、ちょっと後ろを見る。

 後ろから人が来ている場合は、どうせ数秒だから、ドアを開けたまま待っているのが、マナーだ。

 日本人は後ろなんか見ないで手をはなすから、すぐ後ろに人がいると、目の前でバタっとドアが閉まる。

 そういうことに敏感な人にとっては、ちょっと不愉快なものである。

 ロンドンでは、ほんの数秒ドアを開けて後続の人を待っていてあげる。後から来た人は必ず、謝意を表する。

 待っていてあげた方も、"All right"とか、"No prob"(probはproblemの略だ)と返事をする。これが完全に「社会的慣習」として定着している。

 たったこれだけのことで、世の中全体が少しばかりホンワリと柔らかいムードになるのである。

 丸の内あたりのサラリーマンが歩いているのを見ていると、すごい無愛想な顔で、今のような話をしても、多分、

 「ドアを開けて待っているなんて、そんな暇があるか、こちとら忙しいんだ。」と言いそうだ。

 しかしねえ。こう言っては失礼だが、貴方が数秒、数十秒、数分遅れたところで、世の中、何にも影響を受けないんだよ。

 ほんの少しだけ、勇気(大げさだが)を出して声をかけたり、ドアを支えて待ってみませんか?

 これによって、不愉快な気分になるということは、まずあり得ない。試して見ると分かります。


by j6ngt | 2005-11-24 01:04 | クラシック

今日は、「ボレロ」が初演された日。音楽あれこれ。

◆11月22日はラベル「ボレロ」が初演された日。

 

 フランスの作曲家、モーリス・ラベルの作品は「亡き王女のためのパヴァーヌ」などの名前ぐらい何となく聞いたことがある方も多かろう。

 管弦楽の為の作品は何も「ボレロ」だけではないのだが、ボレロのクライマックスはクラシックを聞き慣れていない人にも感動を与える。

 ずっと前だが、NHKがN響を使った音楽入門番組を作り、ゲストが西田敏行であった。それまでクラシックをろくに聴いたことがない、という。

 そこで、故・山田一雄(大先生ですぞ)指揮でN響がボレロを演奏するときに、西田敏行をバイオリンセクションの中に座って聴かせた。勿論自分は音を出さない。

 演奏終了後、司会進行役のNHKアナウンサー(だったと思うが、この記憶は曖昧である)が西田氏に感想を求めると、

「自分が何も楽器を弾けないのが悔しくて・・・・」と冗談めかしたコメントを発しようとしていたが、途中で感極まって泣き出し、言葉にならなかった。

 私はそれを見て感動した。これぞ、本物の芸術のすばらしさである。


◆クラシックを聴くのはお勉強ではないし、「予習」する必要など全くない。

 

 ラベルはオーケストラの魔術師と呼ばれたほどの大天才だが、ラベルの音楽を聴くにあたって、何年に生まれ、没したとか、

 管弦楽法(オーケストレーションといいます)、和声進行の特徴とか、転調が巧みであるとか、理屈を知っている必要は全くない。

 勿論、そういうことを知りたくなって調べるなら、それはそれで結構なことだが、

 世間はいまだにクラシックを「お勉強」だと思っているが、それは、誤った先入観だ、と申し上げたいのである。

 また、皆さん、クラシックのコンサートが堅苦しいというが、それは、周りに合わせて慣れたフリをしようとするからだ。

 回りに合わせる必要は全くない。

 どこで拍手するのか分からなければ、しなければよいのだ。勿論、つまらないと思ったときも拍手する必要はない。

 ただし、拍手したいとき、演奏途中に拍手するのはダメ。原則、演奏中に音は立てない。

 ブラボー!なんて叫ぶ奴がいるが、あれは、ブラボーのためのブラボーで、あんな奴が通なのではない。

 私は30年間クラシックを聴いているが、ブラボーを叫んだのは、ほんの数回である。

 本当に感動したとき、人間は、声なんか、出せなくなるものだ。


◆クラシック・コンサートで演奏が気に入らなくて、「下手くそ!」と叫んだことがある。
 

 今から思うと、若気の至りで恥ずかしいのだが、本当なのだ。

 ある時、N響の定期演奏会で、ゲストのドイツ人オペラ歌手が、ワーグナーの楽劇から一部抜粋を歌った。

 途中、大した高音でもないのに、上りきれず、半音近く低く外れた音を出した。これは私は怒った。

 テノールの高音は勿論持って生まれた声域があるのだが、それだけではなく、練習を重ねてテクニックで出すものだ。

 これぐらいの音が出せないのは、明らかに遊んでいて練習していない証拠だ。

 この歌手は元ドイツの空挺部隊の軍人からオペラ歌手になったという変わり種で、ロックも歌うとかプロフィールに書いてあるし、

 前回、日本に来たとき、夜通し六本木で遊んでいたと言う話が有名だった。

 それでも、本番でまともな仕事をするのなら、プライベートで何をしようが構わない。

 が、曲がりなりにもカネを出して聴きに来ている客の前で歌うのに練習不足で高音が出せないのは、プロにあるまじき醜態だ。

 批判されても仕方がないのである。

 私のそのときの怒りは、ブーイングなどという甘いモノでは表現できなかった。

 当の歌手が一度ステージの袖に引っ込み、再び拍手を受けるために出てきた。

 私はすごい大声で「へったくそ!」(下手くそ、の意味ですね)と叫んだ。

 ドイツ人歌手は「ヘタクソ」の意味は分からなかっただろうが、あまり良いことを言われたわけではないのは、さすがに察しがついたであろう。

 そういうことをしても、私がつまみ出されることはないのだ。


◆クラシックコンサートは精神がリベラルなのだ。

 

 クラシックのコンサートは堅苦しい、と皆さんおっしゃるけれども、こういう、自由がある。

 これが、例えば、スマップ(あくまで、仮定上の話である)のコンサートへ行って、わたしが、「下手くそ!」と叫んだら、多分袋だたきに合うだろう。

 いつも思うのだが、ああいう芸能人とか、ロックコンサートとかは、褒める奴しか行ってはいけないような雰囲気がある。

 大げさに云えば、「プチ・ファシズム」だ。褒める奴しか行かないから、いつまで経っても下手くそなのだ。

 クラシックの音楽家を含む「芸人」は、客にもまれて、上手くなるものである。



 噺家(落語家)も同様だ。

 寄席に行ったこと、無いでしょう?落語家なんてのも大変だよ。通の客はきびしいからね。

 噺が上手くないと、「つまらねえぞ!」なんてヤジが飛ぶ。人を笑わせるのが落語である。「つまらねえぞ」は、最も厳しい批評である。 

 話がそれたが、要するに何を言いたかったかというと、

 「形式こそクラシック・コンサートのほうが堅苦しく感ずるかも知れないが、精神はリベラルだ」ということである。


 

 ◆ラベル「ボレロ」前回お薦め大変好評でしたので、もう一度。

 前回、ラベルの誕生日です。「ボレロ」って知っていますか?でお薦めした、アバド指揮、ロンドン交響楽団のCDは、その後、何人もの読者の方々から「大変良かった」というメールを頂き、大変うれしかった。

 このCDでは曲の終盤にさしかかったところで、オーケストラのメンバーが、興奮を抑えきれなくなり、思わず、「ワオッ!」と叫ぶのがいい。

 こういうクラシックのCDは大変珍しい。今回初めて、読まれた方も是非どうぞ。お薦めです。


by j6ngt | 2005-11-23 02:39 | 音楽

「<東武運転士>解雇処分を正式決定」←妥当である。

◆記事:<東武運転士>解雇処分を正式決定

 

 東武鉄道の30代の運転士が長男(3)を運転室に入れたまま約4分間乗務した問題で同社は15日、運転士を懲戒解雇処分にすると正式に決定した。

 「解雇は厳し過ぎる」と電話やメール約2000件が寄せられていたが、「鉄道事業者にあってはならず、重大な服務規律違反にあたる」として当初の処分方針を貫いた。(毎日新聞) - 11月16日3時3分更新


◆コメント:東武鉄道は正しい。

 

 大衆は感情で行動する(意見を述べる、苦情メールを送るのも無論「行動」だ)ということは、先の衆議院選挙でいやというほど、思い知らされたが、今回も、あきれた。

 レールの上を走るから、そんなに堅いことをいわなくても良いではないか、と言う人は、もう福知山線の事故を忘れたのであろうか?

 あの時の事故の原因はいまだに解明されていないが、人々は、あのとき、「JR西日本の運航管理体制に問題がある」というマスコミの勝手な憶測しか根拠のない断定を利用した。

 そして、マスコミによる扇動に乗って、事故の被害者の遺族はもとより、

 関係のない一般人までが、事故と直接的には無関係のJR西日本職員に暴力を振るうという野蛮な光景が繰り広げられた。



 それが今回はどうだ?

 「運転士が公私を混同し、自分の息子が泣いたから運転室に入れる」という重大な服務規律違反を犯したのに、「可哀想だから」大目に見ろ、という。

  何を言っている。


◆JR西日本の厳罰主義と混同するな。
 

 話がそれるが、全然関係のない、「問題のすり替え」をしているブログがあった。

 

「福知山線事故の後、JRの『厳罰主義体質』が問題視されていたことをもう忘れたのか」



 というのである。 違う。全然問題が違う。

 勘違いの一つ目。

 そもそも、福知山線の事故原因はいまだに特定されていない。

 したがって、「厳罰主義と事故の因果関係」を断定するべきではない。これが一つ目の誤り。

 勘違いの二点目。

 JR西日本における厳罰主義とは、「ダイヤを守るため」の厳罰主義である。

 つまり、人命よりも、会社の収益、もうけ、を重視しすぎること」が問題だといわれているのだ。しかもそれが正しい主張か否か、断定できぬ。

 いずれにしても、今回の「厳罰」は全く正反対の理由に基づいている。

 東武鉄道の措置は、「運転士が、人命を守るための最低限の安全運転義務を守らなかった」事実に対して下される「厳罰」である。

 混同してはいけない。

 
◆結果論で論じるべきではない。

 

 気の毒だ? そういうのを「結果論」という。 たまたま事故が起らなかっただけだ。

 鉄道の運転士は常に前をまっすぐに見ていなければならないのである。

 自分の子どもだろうが、カミさんだろうが、集中力の妨げになる人なり、物体なりを運転室に入れてはならないのだ。鉄則だ。

 突然、軌道(レール)上に障害物が入る可能性は常に存在する。

 目の前ならどうしようもないが、遙か前方でクルマが踏み切りで立ち往生しているのを見つけることができれば、大惨事を免れる事が出来る。

 ところが、自分の子供に気を取られ、もしも、ほんの数秒発見が遅れただけで、大惨事が起きる可能性が高くなる。

 事故が起きてからでは遅い。

 事故が起きる可能性をあらかじめ、可能な限り排除するために、鉄道会社は厳密な服務規程を運転士に課している。

 それは、言うまでもなく、大勢の乗客の人命に直結する問題だからである。

 この運転士は、それを認識していながら、自らの意思で規程に違反した。頭にピストルを突きつけられていたわけではない。



 自分の列車は順調に運行していても、先行する列車にトラブルが起きて、突如駅と駅の間で停止信号に変るかも知れない。

 それを「見逃す可能性を生じさせる人や物」が電車の運転席に存在してはならないのだ。

 たかが子供じゃないか、というのは間違っている。

 子どものいない人は分からないだろうが、3歳児ぐらいになると、びっくりするほど強い力を出すことがある。

 運転席に入った本件運転士の子どもがはしゃいで、運転中の父親の腕にぶらさがったり、飛びついたりする危険がある。

 加速装置にしても、制動装置にしても急激な操作は厳禁だ。

 ましてや、運転士の意思とは無関係に、そのような動作をすることになったら、何が起きるか分からない。急制動により、乗客が転倒するかも知れぬ。


◆はっきり言うが、母親が一番悪い。

 

 この運転士は、仕事が終わったら家族と合流して買い物だか、食事に行く予定だったという。偶然に乗り合わせたのではない。

 運転士本人も使命感が足りない。軽率のそしりは免れない。

 しかしながら同時に、運転士の妻、子どもの母親が最も重大な、ミスを犯したと責められても、仕方がない。

 この妻は、「夫の仕事は多数の人命を預かる、誇り高い仕事だ」という意識がなく、「電車の運転士」という職業を、軽視していたとしか思えない。

 多分、妻は、運転士の服務規程のイロハのイも知らなかったのだろう。

 妻は、自分の行為が夫の職業の尊厳を貶めるものだという認識すらなかったのだ。それが悲劇だった。

 3歳児の母親は、そもそも、はじめから運転席に近づくべきではなかった。

 そして、子どもが泣き出した時点で、運転している夫の注意を削がないために、全力を尽くすべきだった。

 首に縄を付けても、ひっぱたいても、こどもを運転席から遠ざけるべきだった。

 規則を知っている知らないという問題ではない。

 鉄道運転士の妻になるからには、それぐらいのことは常識で考えて、分からなければならない。

 どうも、近頃の若い奴は幼稚だね。こんなことは、中学生でもわかりそうなものだ。


◆一回、「大目に見」たら、次に同様の事態が起きても、クビに出来なくなる。

 

 今回、問題を起こした運転士を見逃したら、次から似たようなことをする者が出る可能性が高くなる。

「少しぐらい、子どもにカッコいい自分の運転士姿を見せてやりたい」という社員が出現する可能性が大いにある。

 何せ、「クビにならない」のだから。

 今回、東武鉄道に「苦情」を寄せた人たちは、今後、「ちょっとぐらいなら、お父さんの運転席を見てもいいよ」という運転士が続出しても、抗議しないのでしょうね?

 「抗議しない。その結果事故が起きても、自分が了承した不利益だ。」

 と念書を書き、署名捺印の上、東武鉄道に提出のうえ、それでも今回の事に抗議する、というのならば、筋が通る。

 そんな人がいるわけがない。事故が起きれば、ギャーギャー文句を言うに決まっている。

 だから、今回のことは、その場の感傷で安易に論ずる問題ではないのだ。


◆クビを切る人間の辛さも考えろ。

 

 東武鉄道は、2000件にも及ぶ、「苦情」にも関わらず、規則は曲げられないといって、運転士を懲戒解雇とした。

 これは、誤解を恐れずに言えば、「立派」である。

 世間はクビを切られる運転士の事ばかりに着目するが、全国から抗議が寄せられていたにもかかわらず、

 「運転士としてあってはならぬこと」という固い信念を曲げず、服務規程をそのまま適用した東武鉄道側だって、苦しいのだ。

 直属上司は勿論、人事部や、経営陣も悩みに悩んだに決まっている。きっと何日も眠れなかったと思う。

 不況から脱していない、今の日本で、会社を「懲戒免職」になった者の再就職が如何に厳しいかということぐらい、サラリーマンなら誰でも骨の髄から承知している。

 3歳児を抱えた運転士が職を失い、これからどうなるかを考えて、多分、最終的に解雇を通知した担当者は何日も、悪夢に苦しんだに違いない。これからも苦しむだろう。

 誰も、今回問題となった若い運転士に個人的な恨みはない。 クビを切ったからといって自分の得になることは何もない。

 普通の人間は、他人から恨まれるようなことを平気で断行するような図々しい神経を持っていない。

 ただただ、公共交通機関としての判断である。

 「泣いて馬謖を斬る(規律を保つためには、愛する者をも止むを得ず処分する)」とは正にこのことだ。

 私は、東武鉄道に対して、同情を禁じ得ない。


◆「とかくに人の世は住みにくい。」

 

 冗談ではなく、私は、この騒動を知って、漱石の「草枕」の冒頭が真っ先に頭に浮かんだ。

 

 山路を登りながら、こう考えた。

 智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。


by j6ngt | 2005-11-21 22:37

「日米首脳会談 自衛隊イラク派遣延長を示唆」←どこまでバカなのだ?

◆記事1:日米首脳会談 自衛隊イラク派遣延長を示唆 同盟強化確認

 

 小泉純一郎首相は16日午前、ブッシュ米大統領と京都迎賓館で会談した。

 自衛隊と米軍の連携を強化する在日米軍再編の中間報告がまとまったのを受け、同盟協力を世界規模に拡大する方針を首脳間で確認した。

 首相は日本政府としてイラクの復興支援に継続して取り組む方針を表明。

 両首脳は会談後、共同記者会見を行い、首相は「自衛隊の活動も含め、国際社会の責任ある一員としてイラクの復興支援に何ができるか、日米同盟の重要性をよく考えながら総合的に判断したい」と、12月14日に期限を迎える自衛隊のイラク派遣を延長する意向を強く示唆した。(毎日新聞) - 11月16日17時20分更新


◆記事2:「サマワの外国軍必要ない」=最も安全な地域の1つ-イラク報道官

 【シドニー18日時事】18日のオーストラリアの国営ABC放送によると、イラクのジャファリ首相の報道官は、自衛隊が駐留するイラク南部サマワについて、「最近サマワを訪れたが、イラクの中で最も安全な地域の1つ。(外国の)軍隊は必要ない」と語った。

 サマワには現在、豪州と英国の軍隊が駐留し、自衛隊警護のほかイラク軍の訓練を行っている。(時事通信) - 11月18日11時1分更新


◆記事3:米、サマワ陸自の移動打診 新たな軍事的貢献要請

 【ワシントン19日共同】米政府が先月、日本政府に対し、イラク南部サマワに駐留する陸上自衛隊を他の地域に移動させ、地方政府の治安・行政能力の向上を目指す新規復興事業に新たな軍事的貢献ができないかどうか打診していたことが19日分かった。復興政策に携わる同盟国の複数の外交筋が明らかにした。来月の総選挙、正統政府樹立という大きな節目を控えながら、イラクでの「泥沼化」懸念をぬぐい去ることができないブッシュ政権が主要同盟国に中長期の軍事的関与を求めた動きが初めて判明した。
 日本政府は現時点での自衛隊の新規復興事業への参加について「不可能」と伝えたが、米政府は今後も同盟国の関与を模索する方針で、16日の日米首脳会談で自衛隊の派遣延長を事実上表明した小泉政権に引き続き協力を要請する可能性がある。(共同通信) - 11月19日20時0分更新


◆記事4:「予断許さない状況」=サマワ滞在中に着弾も-陸自西方総監が帰国後会見・熊本

 

 イラクに派遣された陸上自衛隊の第7次、8次復興支援群の激励を終えて帰国した林直人西部方面総監は15日、熊本市の同総監部で記者会見し、サマワ滞在中、宿営地周辺に砲弾が落ちたことを明らかにした。
 林総監は現地時間7日正午ごろから8日午前10時半ごろまで宿営地に滞在。7日夜の砲弾着弾について「(自分は)翌朝、気付いた。(部隊は)そんなに変わった様子はなく、淡々としていた」と説明。治安状況については「バグダッドとは状況が違う」と前置きした上で「すべてが安全ということではなく、予断は許さない。時々(砲弾が)落ちてくるわけだし」と話した。(時事通信) - 11月15日18時1分更新


◆コメント:GiveアンドGiveの日本

 

 勿論、日本が、である。

 日米首脳会談で、ブッシュは日本に23時間しか滞在せず、小泉首相との会談も数時間だが、上に長々と引用した記事から受ける印象は、

 ブッシュ:「イラクは長引きそうだから、まだ、自衛隊置いておいてくれ。出来ればサマワで道路工事をしているだけでなく、もう少し危ないところに行って、イラクの治安維持に協力しろ」

 小泉:「かしこまりました」

 というだけのことで、議論ではなく、ブッシュは小泉という「部下」に指示を出しに来ただけではないかと思われる。

 これに対して日本人は特に腹がたたないようだが、みんな、変っているね。

 日本はアメリカの要求に応じて、イラク復興費用、50億ドルを拠出した。

 さらに、イラクに自衛隊を派遣して、サマワには311億円の税金を使って自衛隊の宿営地を建設し、

 そこには、常時、3か月交替で、500人の自衛官が駐留して、彼らには、1日25,000円の特別手当が支給されている。

 最初から全員にこの金額が支給されていたわけではないし、途中から自衛官も増員されているから、正確な計算ではないが、

 陸上自衛隊が一番最初にサマワに到着したのが、2004年2月8日であるから、今日(2005年11月20日)で、651日目である。

 500人の自衛官に特別手当25,000円の特別手当を651日間支払ったとすると、8,137,500,000円(81億3,750万円)もの税金が使われている。

 その間、学校や道路を補修したり、給水事業を行ったというが、首相や防衛庁長官が記者会見ではっきり説明をしないので、

 サマワの自衛官派遣を延長することに(ブッシュのご機嫌を取る以外に)如何なる意味があるのかさっぱり分からぬ。


◆コメント2:サマワのイラク人は「自衛隊はいらない」と言っている。

 

 記事2でイラク政府の報道官がはっきり言っている。イラク人が、外国の軍隊は要らないといっているのに、

ブッシュ追従のおべっか小泉は、イラクへの派遣延長をもう決めているようだ。


◆コメント3:米国は自衛隊に、サマワではなくて、もっと危ないことをさせようとしている。

 

 記事3を読めば明らか。

 アメリカは日本の自衛隊にもう一歩踏み込んで、イラク復興支援して欲しいというのだが、それは、はっきり言えば、イラクの治安維持に協力しろ。軍事的に介入しろということだ。

 日本は日本国憲法により武力の行使を禁じている。

 勿論、日本本土が外国に攻められたときは、国民の平和的生存権を守るために武力を用いても構わないと思うが、

 自衛隊はそのように、日本と日本国民を守るための「最低限の実力」であり、海外でアメリカを助けて武力を行使するなど、違憲も甚だしく、絶対に認められない。


◆コメント4:帰ってきた自衛官が「予断を許さない」といっている。

 

 自衛官は政治的な発言はできないから、小泉首相の政策が正しいとか間違っているとかを記者会見の席上言うことはできないが、

 これまでに、自衛隊の宿営地には10発もロケット砲や迫撃砲が、明らかに自衛隊への威嚇として撃ち込まれている。

 自衛隊の指揮官は、極力、イラク駐留の危険性に関しては触れないように言われている筈なのに、

 先日イラクから帰国したばかりの林直人西部方面総監は「予断を許さない状況」という表現を用いている。

 これは、出来る限り控えめな言葉を使っているはずだから、実際、サマワにいる自衛官は相当な危険を感じていることが容易に推察される。


◆結論:自衛隊は引き上げろ。

 

 日米同盟が大事、と小泉首相を始め、バカの一つ覚えを繰り返す人の頭がどうなっているのかさっぱり分からない。

 米国との同盟関係が大事だから、米国の機嫌を損ねないためだ、とはっきり言う情けない若いのもいるが、よく考えてみろ。

 日本が50億を拠出し、更に自衛官をイラクに派遣までしているのに、アメリカは六カ国協議で拉致問題解決の為に、北朝鮮に大して凄みをきかせることもしてくれない。

 また、日本が国連安全保障理事会常任理事国になりたいと手を挙げたら、アメリカは何と、中国と結託してこれを妨害したのだ。

 50億ドルも、自衛隊派遣も、アメリカは何とも思っていないということがまだ分からないのか。

 アメリカは裏切り者ではないか。こんな嘘つき国家が有事の際に日本を守ると、日本国民は本気で考えているのか。おめでたい。


 小泉さん、支持率急降下のブッシュに忠誠尽くしてどうするんだ?

 アメリカでは、イラク戦争開始以来、米兵の死者数が2,000人を超えて、ブッシュ政権の支持率は急降下している。

 アメリカ人の6割はブッシュが不正直だと思っているという世論調査の結果が出たそうだが、そんなこと、今頃分かったのか。

 イラクの大量破壊兵器保有の証拠を持っているとブッシュ政権がしきりにアピールしていたのは実は嘘だった、

 ということが分かったのに再選させておいて、今頃ブッシュが嘘つきだと気がついたのか?

 アメ公は図体がでかいだけあって、頭に情報が届くまでに時間がかかるのかも知れぬ。

 今頃世論調査で「ブッシュは嘘つきだと思う」なんて答えても、遅いんだよ。バカ。

 それを支持する小泉も大バカだし、その小泉を衆院選で大勝させた日本の有権者もバカだ。


 私は2002年の暮れからアメリカのイラクに対する武力行使に反対し、イラク戦争開戦に反対し、

 それを支持すると公式に声明を出した小泉首相は間違っていると書き、イラク復興支援特別措置法の成立に反対し、

 自衛隊のイラク派遣にも反対し、今でも反対である。

 嘘だと思うなら千数百本になるが、過去の日記を読んで下さい。


by j6ngt | 2005-11-20 22:44 | ニュース

「探査機はやぶさ20日着陸 世界初の岩石採取に挑戦」←「イトカワ」に着陸する「はやぶさ」

◆記事:探査機はやぶさ20日着陸 世界初の岩石採取に挑戦

 

 宇宙航空研究開発機構(宇宙機構)は17日、探査機「はやぶさ」を20日早朝に小惑星イトカワに着陸させると発表した。

 日本が地球以外の天体に機器を着陸させるのは初めて。小惑星からの岩石採取は世界でも初めての挑戦となる。

 19日夜に降下を開始、20日午前5時ごろに最終的な判断を行い、同6時ごろ着陸する見通し。

 はやぶさは小惑星にレーザーを照射して精密に高度を測りながら降下。

 目印となる反射板付きボールを投下し、カメラでボールをとらえて自らの姿勢などを確認し、着陸する。

 地面に着いた瞬間に金属球を発射、舞い上がった岩石の破片をカプセルに収め、約1秒で再び上昇に転じる計画だ。(共同通信) - 11月17日17時13分更新


◆コメント:「イトカワ」と「はやぶさ」

 

 最近ニュースで「イトカワ」に小惑星探査機「はやぶさ」が・・・という情報をしばしば伝えてくるが、一般人にはピンと来ない。

 来ないけれども、かなり画期的なことである。

 太陽系の大きな星は勿論水星から冥王星までの9つだが、これは、むしろ例外的に馬鹿デカいのである。

 それ以外にもの凄い数の「星」が飛んでいる。直径100メートルぐらいから、直径100キロメートルの小さい星が太陽の回りを回っている。

 今まで約6000個の小惑星が発見されており、毎年、新たに数百個が発見されている。

 しかし、小さすぎて地球から発見できない直径1kmぐらいの小惑星は100万個以上もあるだろうと言われている。

 「イトカワ」、というのは、サツマイモのような形をした長い方の径が600メートルぐらいの大きさで、地球と火星の間で楕円軌道を描いて、それでも太陽を周回している「小惑星」である。

 それに向って飛んでいった「探査機」が「はやぶさ」である。

 イトカワの名は、日本のロケット工学の始祖、糸川英夫氏にちなんで付けられた。

 というか、発見したのはマサチューセッツ工科大学の地球近傍惑星(NEA=Near Earth Asteroid)研究チームで、命名権は彼らにあったのであるが、

 日本は、この小惑星に探査機を飛ばすことをいち早く決め、それに際して、日本で「ロケット」というものを初めて手がけた糸川氏の名前にしたい、

 とMIT(マサチューセッツ工科大学)に頼んで、申請して貰ったのである。

 ちなみに、これは、あまり意識されていないが、探査機の名前「はやぶさ」は、糸川英夫博士(1912~1999)が戦時中設計した、当時他国もびっくりするほどの高性能を誇った戦闘機「隼」に由来すると思われる。


◆地球から3億キロ離れた500メートルの小惑星に着陸する

 

 この計画は、今ひとつ「派手さ」に欠けるので、一般の注目を浴びにくいが、実は先端技術の粋を結集している。

 なにしろ、20日、はさぶさはイトカワに着陸する地点は、地球から3億キロも離れたところにある。

 これは、光でさえ、到達するのに17分もかかる(ちなみに太陽から地球に光が届くのに8分を要する。我々が見ているのは8分前の太陽である。月でさえ、光が到達するのに1.3秒かかる)ほどの距離なので、リアルタイムで地球から操作出来ない。

 そこで、結論だけ言うと、記事にもあるが、はやぶさは自律航行といって、自分で自らの位置を認識し、さらに特殊なカメラを含む高度な技術を用いてイトカワを「自分で発見」して着陸するのである。

 はやぶさが地球を離れたのは2003年5月3日である。イトカワに着くまでに2年以上かかっている。

 これほど長く飛ぶことができるのは、イオンエンジンという私には到底理解不可能の新技術が使われているためである。

 分からないことを告白したままそのまま記述すると、イオンエンジンは、「推進剤キセノンを電波の力でイオンという電気を帯びた粒子にして、その粒子から電気を取って中性プラズマとして高速噴射し、 その反作用を推進力とする」エンジンであり、クルマのエンジンのように物を燃やさずに済み、しかも従来のエンジンよりも遙かに大きな加速度を得ることが出来るのだそうだ。

 また、はやぶさは最終的には先に書いたとおり「自分でイトカワを見つけ」て、それに接近してゆくのだが、最初、はやぶさを小惑星イトカワの方向へ向けるために、日本の技術者達は、はやぶさを一旦地球を離れた後、地球ぎりぎりのところをかすめるように飛ばせて、地球の引力を用いて方向を変える、「スイング・バイ」という方法を用いた。

 どうしてこういう計算が出来て、また、その通りにはやぶさを飛ばせる事が出来るのか、私など、またまた正直に言うと、説明を読んでも、ちんぷんかんぷんであり、世の中には頭の良い人がいるものだ、と つくづく感心した。


◆何故、そういうことをするのか。

 

 つまり計画の目的であるが、イトカワの地表から数グラムのサンプル(土の標本ですね)を持ち帰ることだ。

 地球のような大惑星では、太陽系誕生時から物質が大きく変化しているが、イトカワのような小惑星は太陽系が誕生したときの状態を保っていると考えられ、その表面からサンプル(といっても、ホンの数グラムである)を持ち帰ると、太陽系誕生や地球が形成される過程に関する研究に役立つことがほぼ間違いないからである。


◆サンプルの採集方法がまた、最新技術。

 

 はやぶさは、今、3億キロ離れたところで、自分でイトカワを発見して既に画像を地球に送っているが、最終目的は今、書いた通り、イトカワの表面から「土」(というのかね?)の標本を採集して、地球 に持ち帰ることだ。

 大きな惑星ならば、その惑星の引力を用いて着陸出来るが、イトカワは何せ、500メートルの小惑星なので引力は無きに等しく、はやぶさはイトカワに長時間へばりつくことは、出来ない。

 そこで、どうするかというと、20日の未明、つまり、今夜という日曜日の未明、2時頃、はやぶさはイトカワに着陸する。

 その瞬間、金属の球をイトカワ表面に向って発射する。

 そうすると、イトカワの表面から土ぼこりが立つでしょう?それを空中でキャッチしようというのである。すごいことを考える。

 繰り返すがこれは、地球からコントロール出来ないので、はやぶさが自分で判断して行うのである。

 サンプル採集後、はやぶさはまた2年かけて地球に戻る。そして自らは戻らず、標本の入ったカプセルだけを、地球に放り投げて消える。

 カプセルは減速しないで、すさまじいスピードで大気圏に突っ込むので、最終的には表面の温度が3000度にも達し、多分オーストラリア大陸に「落ちる」。

 無論、その高温と衝撃に耐えうるカプセルを作る技術がある、ということだ。


◆こういうことを行うのは、人類史上、日本人が初めて。

 

 そう。このたび日本がやろうとしている「小惑星に探査機を飛ばして、惑星のサンプルを収集して地球に戻す」という計画は人類史上初めてのことなのである。

 日本でこういう事をしている組織、アメリカのNASAに相当するのはJAXA(Japan Aerospace Exploration Agency,宇宙航空研究開発機構)といい、2003年10月1日宇宙科学研究所(ISAS),航空宇宙技術研究所(NAL),宇宙開発事業団(NASDA)の3機関を統合して発足したものである。

 JAXAのホームページは「JAXA」で検索すれば、当然ながら一発で見つかり、そこに、はやぶさに関する詳細な説明がある。

 Flashなど動画を多用して、なるべく素人にも何となく理解出来るように作られている。

 今夜、はやぶさがイトカワに着陸する様子はネット中継されるという。

 何せ、情報が届くのに速くても17分を要するのだから、「生」中継というのかどうか。不思議な話である。

 とにかく、日本には世界に冠たる頭脳が結集しているのだ。


◆糸川英夫博士のこと。

 

 糸川英夫氏は、東大工学部を出て、前述のとおり戦前戦中は飛行機を設計する人だったが、戦後はもっぱらロケット開発を手がけ、日本で最初のロケットを飛ばした人である。

 これが、「ペンシル・ロケット」と言って、素人目にはオモチャかプラモデルにしか見えない。

 手のひらにのるほどの大きさ、重さ、のものなのだが、宇宙開発技術者達には、これに対する特別な思い入れがあるようだ。

 一番最近スペースシャトルに搭乗して見事に任務を果たした野口さんは、このペンシルロケットを「持って」宇宙へ行ってきたほどである。

 技術者、科学者としての糸川英夫氏の功績は素人が軽々しく論ずるべきではないが、とにかく専門家の間ではものすごく頭が良く、発想が卓越しており、実行力があり、人格者だということでいまだに、「神様」みたいな、兎にも角にも滅多にいないほどの優れた人だったようだ。

 糸川氏が亡くなったときに、弟子の学者・技術者達が書いた文章がここに載っているが、如何に尊敬されていた方か、分かる。

 他方、このように才能豊かな人には、ありがちだが、糸川先生は多才な方であらゆる事に興味を示した。

 音楽好きでチェロを弾いた。

 また、大正生まれの日本人男性であまりこういう人はいないと思うが、大人になってからバレエ(踊りのバレエである)の正式のレッスンを受けた。

 ご本人は大まじめなのだが、マスコミはこういう事ばかりを取り上げるので、一般庶民は「変な学者」と思っていた。

 さらに、戦後、ロケットと平行して個人的には「ストラディバリウスを超えるようなバイオリンを作りたい」と音響学的な見地から研究に研究を重ねて、晩年ついに完成した逸話があり、これは、糸川先生ご自身による、八十歳のアリア―四十五年かけてつくったバイオリン物語という本に詳しい。

 一般人向けのエッセイというか啓蒙書も山ほどある。Amazonで「糸川英夫」で検索すると、未だにすごい数の著書が売られている。

 代表作は「逆転の発想」という本である。

 糸川博士は、最初のロケット、「ペンシル・ロケット」の発射実験をする際、水平に発射した。

 それは、調べていただくと分かるが、それなりの理由があるからだが、とにかく、凡人はロケットといえば、垂直に発射することしか頭に浮かばない。

 それを「水平に」発射するという着想が、殆ど天才的である。

 「逆転の発想」は、そういう先生が書いた本だから、常識を覆すようなことに満ちあふれているが、単に奇を衒(てら)っているのではなく、一々、合理的根拠があるのだ。

 代表作と言っても、文庫本で、厚さが1センチもない。

 頭がいい人は、余計なことを書かず、要点を分かりやすく書くので、糸川先生の本は大抵これぐらいの厚さなのである。



 きりがないので、最後に一つだけ。

 糸川博士は理論性の極致であるロケット工学の科学者だが、何と、西洋占星術を本格的に研究して、本を出している。今も買える。

 人の一生で、これほどずっと様々なことに好奇心を抱き続け、本格的に実行してしまい、それなりの成果を挙げることができるのか、と感動する。

 糸川先生の生涯には、ただ驚嘆し、畏敬の念を抱かざるを得ない。


by j6ngt | 2005-11-19 13:49 | 宇宙

「組織的詐欺」と慰謝料も=外為証拠金業者に賠償命令-東京地裁 素人が外為に手を出してはいけません。

◆記事1:「組織的詐欺」と慰謝料も=外為証拠金業者に賠償命令-東京地裁

 

 少ない資金を元手に多額の外貨を売買する金融商品「外国為替証拠金取引」で損害を被ったとして、

 千葉県の女性(76)が業者の「サンユートレックス」(東京都中央区)に約183万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は14日、全額の支払いを命じた。

 原道子裁判官は「虚偽の説明で取引を開始させるなど、取引全体が会社と従業員らによる組織的詐欺で違法」と非難。

 精神的苦痛を受けたとして、女性側が求めた50万円の慰謝料も認めた。 (時事通信) - 11月14日20時1分更新


◆記事2:外為証拠金取引業 破綻急増 規制強化で今年20社

 

 少ない元手で多額の外国為替取引ができる外為証拠金取引を手掛ける業者の経営破綻(はたん)が、今年に入り二十社に上ったことが、帝国データバンクが十五日発表した調査で分かった。

 七月の金融先物取引法の改正で電話による勧誘が禁じられるなど規制が強化され、当局による監視も厳しくなったことが影響したとみられる。

 調査した平成十二年から今年十月まででは二十二社が破綻、負債総額は四百五十二億円に達した。

 帝国データバンクは「個人からお金を集めながら、実際に運用していたかどうかすら怪しい業者も散見される」として、今後も同業者の破綻は続くとしている。

 帝国データバンクの調査では、外為証拠金業者のほか商品先物業者なども含めた資産運用関連企業の破綻は、

 十二年から今年十月までに四十五社、負債総額は二千百四十億円に達した。

 形態は破産や清算が多く、投資した個人にはお金が返ってこないケースがほとんどとみられている。

 このうち負債規模で四位、今年七月に破綻したジェスチオン・プリベ・ジャポン(東京)の債権者は富裕層の個人が多かったとされており、

 帝国データは「カネ余り、資産バブルの兆しが見え始めている」と指摘している。(産経新聞) - 11月16日3時11分更新


◆コメント:要するに丁半バクチなのですよ。

 

 為替(外国為替)に限らず、株でも債券でも同様ですが、素人が相場にのめり込んではいけません。

 何故、私が偉そうなことを言えるかといえば、詳しくは書けませんが、そういう世界に十数年いたからです。

 記事に載っているようないかがわしい会社ではないです。

 東京外国為替市場という概念があります。

 概念と言ったのは、株式取引を行う東京証券取引所は実際にそういう空間、バーチャルではなくて、場所があるのに対して、

 外国為替市場というのは、専用の通信手段(一番初めの頃はテレックス、次いで、専用電話回線、

 そして、ロイターディーリングシステムというものが出来ました)で世界中に張り巡らされたネットワークの総体を指すのです。

 東京中歩き回っても、「東京外国為替市場」という建物はありません。

 そして外国為替(以下、外為(がいため)と書きます)の主な参加者は銀行、証券会社、生保、損保などの金融機関の他、

 商社、自動車会社、石油会社など、輸出入を行う事業法人などですが、24時間、世界中の国の同様の連中が相場を見ているわけです。

 巨額の資金を動かす欧米のヘッジファンドと呼ばれる投資(というか、投機会社ですね)などは、

 交替勤務で、アメリカやヨーロッパの真夜中でも、誰かが東京を見ていますから、海外からの大口注文で東京外国為替市場が大混乱することもあります。

 通貨を売り買いする人を為替ディーラーと言いますが、専門職で、ずーっと、一日中朝から晩まで、相場を見ているのです。

 帰宅してからも相場が分かるように、ポケットロイターという、相場水準をリアルタイムで見ることが出来る小さいモニターを肌身離さず持っています。

 外為は、ですから、本質的にプロの世界です。 銀行が一番活発に行うのでインターバンクマーケットといいます。

 彼らはそれぞれ、独自の「情報源」を持っていて、ヘッジファンドが巨額の売り、又は、買いをやりそうだ、とか、

 アメリカの財務長官がこんな発言をしたとか、普通の人より早く知ることが出来るのです。

 こういう事は、バクチと同様でして、向き不向きがあります。

 長くやっている人はそれなりに実績があるから、続いているわけで、損ばかりしている人は、すぐに辞めさせられます。

 日本の会社ならば、他の部署の移るだけですが、外国の銀行とか投資銀行、ヘッジファンドのディーラーはもうからないと、

 本当にクビになるのです。失業するのです。 ですから、気合いの入り方がちがう。

 そういう人たちですら、毎日利益を出せるとは限らないのです。 為替ほど予想が難しいものはないのです。

 もし、「自分はディーラーで今まで損をしたことがない」、という人物が現れたら、絶対に嘘をついていますから、信じてはいけません。

 どんな天才的ディーラーも、大損を被って真っ青になることがしばしばあるのです。

 ただ、或る期間を通して最終的には利益を出している、ということです。

 記事に出ている、外為証拠金取引は、先物市場といって、厳密に言えば別の市場ですが、現実には、今まで述べたプロのマーケットに連動しています。

 こう言うところに素人が手を出してはいけません。

 何せ、株に比べて、値動きの速さが比べものにならないぐらい速い。

 プロでさえ、ほんの数秒、注文を出すのが遅れただけで、何百万円、何千万円の損失を生ずることも全然珍しくないのです。


◆外為証拠金業者、毎日のように潰れていますよ。

 

記事1の「千葉県の76歳の女性」はついている方です。全額取り戻せた上、慰謝料まで取れたのですから。

 これは、たまたま、被告となった会社が潰れていないからです。運のいい人です。 しかし、非常に例外的です。

 記事2にも破綻例がありますが、金融庁のサイトにある報道発表のページを見て下さい。

ここ10日間だけを見ても、これだけ潰れているのです。



  • 平成17年11月17日 「株式会社ワールドサクセスに対する行政処分について」
  • 平成17年11月17日 「コスモエフエックス株式会社に対する行政処分について」
  • 平成17年11月15日 「T.A.M株式会社に対する行政処分について」
  • 平成17年11月11日 「株式会社シーズ・ファイナンスに対する行政処分について」
  • 平成17年11月9日 「ジェイテック株式会社に対する行政処分について」
  • 平成17年11月9日 「ユニバーサル・アセット・マネジメント株式会社に対する行政処分」
  • 平成17年11月8日 「IFC投資顧問株式会社に対する行政処分について」
  • 平成17年11月8日 「株式会社ネクサスに対する行政処分について」

 行政処分にも色々ありますが、これらは全部「業務停止命令」です。

 そもそも、これらの会社は既に破綻しているのです。

 お客さんから集めた「証拠金」という、いわば「元手」の資金でこの会社自身が外国為替取引=ディーリングをやって、失敗して大損。

 債務超過になり、潰れている。判を押したように同じパターンです。

 一般のお客さんは最初に「証拠金」を何十万円、何百万円という単位でこれらの会社に預けるのですが、

 潰れられたらカネは戻らないわけです。業者は債務超過で潰れているのだから、損害賠償請求しても、無駄です。

 つまり、一般の方にとっては、外国為替で自分自身が儲けること自体が難しいばかりではなく、

 外為証拠金業者が倒産することにより、証拠金も取り戻せない、という非常にショッキングな状況に追い込まれる可能性が高い。

 「俺は、しばらくやっているが、もうけてるよ」という方もおられるでしょう。稀にあります。

 しかし、続けていたら、必ず、真っ青になるような経験をすることになります。殆ど断言したいほどです。

 とにかく、止めておいた方がいいです。


by j6ngt | 2005-11-18 03:59 | 経済