「医療給付金49兆円に抑制 医療制度改革で厚労省試案 」 まだまだひどい話が続きます。

◆記事1:医療給付金49兆円に抑制 医療制度改革で厚労省試案 [ 15日 12:02 共同通信 ]

 

 来年の医療制度改革に向けた厚生労働省の試案に、現行制度のままでは2025年度に04年度の2倍以上の56兆円に膨張すると見込まれる医療給付費を、生活習慣病予防や長期入院の是正策などにより49兆円(国民所得の9%)に抑制するとの案が盛り込まれることが15日、分かった。 この案を基本に、上乗せの抑制策として、


  1. 65歳以上の窓口負担を原則2割にする(25年度の削減効果1・3兆円)

  2. 1000円以下の低額医療費を公的医療保険の給付対象外とする「保険免責制度」を導入(同4兆円)

  3. 診療報酬を25年度までに10%削減(同4・9兆円)


-を選択肢として提示する。来週中にも公表。政府、与党内の議論のたたき台とする。


◆記事2:◆記事2:経団連、医療給付費抑制で目標設定・2010年は30兆円以内[日経 10月14日]

 

 日本経団連は14日、医療制度改革への提言をまとめた。

 2010年度の公的医療給付費を30兆円以内に抑制する総額目標の設定を初めて提唱した。制度改革論議に一石を投じそうだ。

 医療給付費の抑制目標をめぐっては、経団連の奥田碩会長も参加する経済財政諮問会議の民間議員が経済成長率に高齢化率を加味して計算する伸び率の範囲内に抑えるべきだと提案している。

 経団連は「伸び率の目標は毎年の医療費実績や景気変動によって目標の数値が変わってしまう」とし、総額を掲げた対案を提示した。

 経団連は30兆円の根拠について「2025年度時点で、潜在的な国民負担率を50%程度にするには必要な水準」と説明しており、厚生労働省が試算した2010年度の医療給付費より4兆円抑制する必要がある。

 政府が導入を検討している高齢者医療制度に関しては、被保険者の対象年齢を65歳以上にするべきだとした。政府は75歳を軸に検討しているが、経団連は企業などの負担軽減に配慮したものとみられる。


◆記事3:終末医療費抑制:医療、介護の連携に報酬増額 厚労省 [毎日新聞 10月13日]

 

 厚生労働省は12日、診療報酬と介護報酬が初の同時改定となる06年度改定で、医療・介護関係者が「在宅医療チーム」を組んで入院患者が早期退院できる診療計画をつくり、計画に基づくケアにあたった場合、報酬を上乗せする方針を固めた。

 終末期を迎えた患者の尊厳を重視するとともに、自宅で死を迎える人を増やすことで高額な「終末期医療費」にメスを入れる狙い。自宅死亡が2倍になれば、25年度の終末期医療給付費を5000億円削減できると見込んでいる。(中略)

 死亡前1カ月の「終末期医療費」は総額約9000億円(1人当たり平均112万円)で、医療費全体を膨らませる大きな要因になっている。

 高齢化の進展によって年間の死亡者数は毎年2万人超ずつ増える見通しで、厚労省は終末期医療費を抑えるため、自宅で死亡する人の割合の2割から4割へのアップを目指すことにした。


◆コメント1:医療費の患者負担を上げ続ける小泉君。

 

 この云い方は、好きではないが、今回は私は云う資格が有ると思う。

 「だから、いったでしょ?」

 何のことかといえば、衆院選の前、9月7日の日記で、【衆院選】自民党が勝利すると、こういうことが起きる。と題する稿を上げた。

 その中で、小泉は必ず、サラリーマン増税の他に、「医療費の本人負担を増やす」と書いた。

 そのとおりになってるでしょう(但し老人医療費とは書かなかったから、完全に予想通りではないが)、といいたいのだ。

 小泉首相という人は、以前から患者の窓口負担を引き上げたがるのだ。

 1997年、本人負担割合を1割から2割に引き上げたのは、当時の厚生大臣だった小泉純一郎氏である。

 その5年後、小泉君は総理大臣になって1年を経たところで、本人負担を2割から3割に引き上げた。

 この時、当時の丹羽厚労相は、診療報酬(所謂、医者が提出するレセプト、保険の点数計算というやつ、に応じて、国から医者に支払われるおカネ)を大幅に引き下げたばかりだったので、

 「診療報酬を引き下げたから、健康保険財政には余裕があるから、患者本人の負担を増やす必要はない。これでは、改革ではなく、意味のない国民の負担増だ」と反対した。

 ところが、他人に反対されると、理屈が通っていればいるほど拗ねて、逆のことをしたがる、小泉純一郎という、この幼稚な宰相は、トップダウンで押し切って、本人負担率を3割にした。



 そして、今回は、老人をターゲットにした。

 世代間で負担率に格差があるのは、おかしい、というのが大義名分のようだが、果たしてそうか?

 一般論としては、人間は年を取れば取るほど、身体にガタが来て、医者の世話にならなければならず、若い頃ほど無茶をして働いて稼ぐ訳にはいかないのだから収入が減る。

 くどいようだが、一般論である。高齢者には、もともと金持ちもいるだろうし、若い頃からカネを貯めるか増やすことに熱心で、そこそこ資産を保有している人もいるだろうが、人にはそれぞれ事情がある。

 若い頃から一生懸命働いたが、その所為で身体を壊し、中には寝たきりとなり、年金や、個人で加入していた保険だけが頼りという年配の方の方が多い筈である。

 そう考えると、高齢者の医療費の自己負担を現役バリバリと同じにするのは、酷だ、と考えるべきである。

 それが為政者の正しい発想だ。


◆コメント2;経団連は政治に口を出しすぎだ。

 

 記事2を読むと腹が立つ。

 またしても、経団連の奥田会長が、政治に口を出している。出し過ぎだ。

 しかも、何時までに、いくら、医療費の国庫負担を減らすべきだなどと、細かい数字まで上げている。

 それは、政治家と役人の仕事で、クルマ屋のオヤジの出る幕ではない。

 2025年には、本人負担率を半分にしろという。

 要するに団塊の世代の大量定年を2007年に控えて、どの企業も、退職金や厚生年金の会社負担を出来るだけいろいろ分かりにくい制度にして、安く抑えようとしているのだ。

 そういことをしていいのか?

 散々社員を働かせておいて、企業収益は向上しているのに、給料は上げない。

 病気になって社員が困っている時にも、なるべく会社はカネを出さない。

 そして、30年以上も真面目に働いたサラリーマンに「ご苦労様」という感謝を込めて支払う退職金をどんどん減らそうという。

 会社員は、「どうせ、おれたちは使い捨ての兵隊だ」と思うようになる。モラルが下がる。生産性が下がる。不祥事も増えるに決まっている。

 それぐらいの人の心が分からなくて、良くも経営者面をして威張っていられるものだ。


◆コメント3:どうせ助からない患者はさっさと退院させて、医療費の国庫負担を減らすのだそうだ

 

 記事3もすごい。

 終末医療即ちターミナルケアとは、末期癌などの最早回復する見込みがない、はっきり言えば、死を待つだけの患者に対する医療のこと。

 正確に言うとターミナルケアというと看護用語になるのかもしれぬ。専門家の方、教えてください。

 確かに、自宅で死を迎えることを望む人はいるだろう。

 が、一方では、病院で最後まで専門家に診てもらいたい患者だって多いはずだ。

 末期癌でたびたび激痛に襲われる人に対しては、モルヒネ系、つまり麻薬系の強力な薬物を用いて鎮痛を試みなければならない。

 そういう人が自宅に帰って、家族、即ち素人にモルヒネを扱わせるつもりか? 素人は、医療行為をしてはいけないはずだ。

 まして、麻薬系鎮痛剤、(というか麻酔薬の部類なの?)の使い方を間違えたら(他の薬物も同様だが)、そのまま死んでしまう。

 注射を打った家族は、いずれは死ぬと分かってはいても、自分が肉親を殺したとの良心の呵責に責められるだろう。



 自宅に帰したら、「在宅医療チーム」を編成して、ケアに当たるそうだ。

 へー。ただでさえ外来と病棟だけで忙しい病院の医療従事者に、そんな余裕が有るのですかね。

 そのためには、医師の数を大幅に増員せねばならず、結局、人件費がかさむ。

 「在宅医療チーム」云々(うんぬん)は国民を一応納得させる(つまり、騙す)ために、響きの良い「アイディア」の域を脱していない。

 要するに、自宅で死ぬか病院で死ぬか、どうせ助からないのなら、それぐらい患者本人の選択を尊重するべきである。

 それを、国が、十把一絡げに、助からない人はさっさと病院から出て云って下さいね。というのだ。 しかもその理由はカネだけなのだ。

 「貴方、もう長くないです。自宅に戻ったら、もの凄い痛みに耐える事になるかも知れないけど、頑張ってください。

 貴方が病院にいるとカネがかかって、どうしようもないのです。」

 人間の一生の終わりという厳粛な時のあり方をそろばん勘定だけで、考えて良いのか?

 それは、人間の死、即ち、その人の一生に対する冒涜ではないだろうか。

 小泉はとにかく弱者に冷酷だ。殆ど異常と云っても差し支えない。


by j6ngt | 2005-10-16 04:10 | 医療


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