オーケストラを聴いてみたら、意外に良かったという嬉しいメールを頂きました。

◆音楽のことを書いて、感想を頂けたときってのは嬉しいですねえ。

 

 私が毎日ここに記す駄文にお付き合い頂ける方が大勢いて下さるのは、誠に有難い事です。

 感想・・お褒めの言葉を頂戴すると、大変な励みになります。また、少しへこんだときに激励して下さったり、気にかけて下さったりする方が大勢おられて、人の情けが身に沁みます。

 それから、私はときどき、素人の分をわきまえず、クラシック音楽について書きます。

 僭越なのですが、お奨めCDを紹介することが多いのですが、これに興味を持って買って聴いてくださって、なかなか良かったというご感想のメールを頂くことがあるのですが、これは本当に嬉しいです。


◆今日は、オーケストラのコンサートにいらっしゃった方がわざわざメールを下さったのです。

 

 勿論、HNを含めて、どなたかということは申し上げられませんが、半年ほど前から、拙文に目を通してくださっていて、

 オーケストラというものに興味を持ったので、コンサートに行ってきたら、なかなか良かった。また行ってみようかと思う、というご趣旨でした。

 これは嬉しかったなあ。

 実は今、世界で最も優れたオーケストラの一つである、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団が来日してます。

 全国を回っているのですが(といっても、勿論それなりのコンサートホールがある大都市になります)、その方は西日本のある街での土曜日のコンサートにいらっしゃったのです。

 プログラム(そのコンサートで演奏される曲目。又はそれを記したパンフレットのこと。今は勿論、ネットでも分かります)を見て驚きました。


◆オール・シューベルト・プログラム

 

 オール・シューベルト・プログラム、つまりシューベルトの曲ばかりのコンサートだったのです。これは珍しい。

 シューベルトってのは、歌を沢山書いた人ですからね。歌曲の王なんていわれて、

 3大歌曲集(冬の旅、美しき水車小屋の娘、白鳥の歌)のどれか一つを声楽家がリサイタルで歌う、というのは、普通です。

 「冬の旅」も「美しき水車小屋の娘」も24曲とか25曲ありますから、これを取り上げるなら、その晩のコンサートは他の曲を歌う余裕は余りないです。



 しかし、オーケストラコンサートでオールシューベルトは、私は他にやった人の記憶がないなあ。

 勿論調べれば、過去にも例はあるでしょうが、かなり珍しい。

 ロザムンデ序曲という、比較的短い曲で始まり、その後、交響曲(シューベルトは9曲書いています)の最後の3曲を演奏している。

 こういうプログラムは、かなり勇気がいる。

 普通は、3曲ぐらい全部別の作曲家が書いた作品を演奏する。そうしないと、変化に乏しくなり、お客さんが飽きてしまうのです。

 それでも、モーツァルトとか、ベートーベンなどの「超大家」は駄作が少ないし、(異論もあるでしょうが)クラシックを聴く人ならば、聞き慣れた曲ばかりで安心感がある。

 だから、オール・モーツァルト・プログラム、オール・ベートーベンプログラムというのはそれほど極端に珍しくはないんです。

 しかしながら、オール・シューベルトは珍しい。

 第一、演奏する方がかなりしんどい。シンフォニー3曲、つまり、7番、8番(未完成交響曲)、そして最後の交響曲第9番(「ザ・グレート」、という名前を付けていることが多い)を下手なオケがやったら、

 聞き手が飽きてくると思うのです。これは、演奏者の集中力と体力が保たないからです。


◆同じ作曲家だけ並べても、特色を弾き分けて、お客さんを飽きさせない、という自信があるのですよ。

 

 つまりですね。同じ作曲家の作品ばかりやっても、それぞれ曲想の違いをはっきり出して、お客さんを飽きさせない、という自信。

 そして、その自信の元になる音楽性、技術、体力があるから、こういうプログラムを組むことが出来る訳です。

 さすがは天下のウィーン・フィル。最後の交響曲第9番の最終楽章は、テンポが早くて、弦楽器は大変なのです。

 それまで何曲も演奏しているので、疲れていることは間違いですから、これは、体力です。音楽家、演奏家は体力が無いと絶対になれません。


◆生のコンサートは再生された音楽とどこが違うかというと、コンサートホールでは身体で聴くのです。

 

 オーケストラコンサートに行って、ステージ上、客席からみて、指揮者の左側で、一番客席に近いところに並んでいるヴァイオリン奏者の集団が第一ヴァイオリンです。

 この人達が、どういう姿勢で演奏しているか、見てみて下さい(他の楽器でもおなじなのですが、第一ヴァイオリンが一番よく見えるということです)。

 椅子に座ってますが、ふんぞり返って弾いている人はいないはずです。みんな少し足を開いて、やや前傾姿勢で、足の裏はぴったりとステージの床に接触させています。

 これはですね。ヴァイオリンを弾くと、顎で軽く挟んでますから、ヴァイオリンが音を出すと、その音、振動が奏者の顎から胴体、脚、足を通してステージの床に伝わるのです。

 その振動は、客席の床に伝わり、客席のお客さんの足の裏を通して、お客さんの身体に伝わっているのです。

 コンサートでオーケストラ全体がフォルテで、ズシン!と音を鳴らすと、こちらの腹に「ズシン!」と伝わるのが良く分かります。

 勿論ヴァイオリンだけではなく、全ての楽器の奏者はそのようにして、自分の身体を通して少しでもコンサートホール全体をならし、ひいては、お客さんにそのエネルギーが伝わるように心がけているわけです。

 器械で再生された音楽の場合、オープン・スピーカーの、ある程度大きなもので聴くと、コンサートよりは遙かに小規模ですが、やや似たようなことが起ります。

 しかし、ヘッドフォンで聴いていると、耳から伝わった振動が頭蓋骨に共鳴していることはあるでしょうが、身体全体では聴いていません。そこが違うのです。

 勿論、毎日コンサートに行くことなど出来ないし、好きなときに自分の好きな音楽を聴くことができるのですから、音楽の録音・再生技術というものは大変有難いのですが、

 一度、100人のオーケストラが出す音を全身で聴いてみると面白いと思いますよ。

 今日、メールを下さった方も、勿論意識なさらなかったでしょうが、そういう独特の経験をなさっているわけで、是非またコンサートホールにいらっしゃって下さい。


◆おすすめCD:バーンスタイン、コンセルトヘボウによるシューベルト8番、5番

 

 今日のお奨めはウィーンフィルにも負けないぐらい、世界有数の名オーケストラ、アムステルダム・コンセルト・ヘボウを、「ウェストサイドストーリー」の作曲者ですが、指揮者としても非常に芸術的な才能を発揮した天才、バーンスタインが振ったものです。

 未完成はいいけど、5番なんて知らないよ、と言う方多いでしょうけれども、全然未完成とは異なる、明るい、軽やかな思わず鼻歌で歌ってしまいそうな、第1楽章の第1主題は一度聴いたら忘れないです。可愛い音楽です。

シューベルト交響曲第8番ロ短調D.759「未完成」&交響曲第5番変ロ長調 です。


by j6ngt | 2005-10-10 04:21 | 音楽


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