福井県知事、「もんじゅ」改造工事を了解・文科相と会談(2月6日) 高速増殖炉とは何か。









◆記事:福井県知事、「もんじゅ」改造工事を了解・文科相と会談

 

 福井県の西川一誠知事は6日、福井県庁で中山成彬文部科学相と会談し、1995年12月に起きたナトリウム漏れ事故で運転を停止している高速増殖原型炉「もんじゅ」(敦賀市)の運転再開に向け、その前提となる改造工事入りの了解を表明した。

7日にも事業者の核燃料サイクル開発機構にこの方針を伝える。核燃機構は直ちに工事の準備に着手する。

 改造工事は17カ月間かかる見通し。ナトリウムが漏れた配管の温度計を交換し、ナトリウム漏れ対策として早期検知システムを取り付け、ナトリウムが迅速に抜き取れるよう配管を太くするなどの内容。工費は179億円を見込む。

 運転再開時には改めて地元の福井県と敦賀市の了解が必要となるが、ナトリウム漏れ事故以来停止していたもんじゅは、10年目でようやく運転再開に向け歩み出す。

 会談で中山文科相は「もんじゅは核燃料サイクル政策を推進するうえで重要な高速増殖炉研究の中核施設」という位置付けを説明、早期の工事着手に理解を求めた。 [2005年2月6日 (日)](日経)


◆コメント:少し古いニュースだが、重要な問題です。高速増殖炉とは何か。

 ◆理科の復習。

全ての物質は原子で構成されている。原子はその構造によりいろいろな種類があり、100種類以上に分類される。これらの「原子の種類」を「元素」と呼んでいる。

◆原子の構造

原子の中心には原子核と呼ばれるものがある。原子核は陽子と中性子から出来ている。陽子はプラスの電荷を持っている。原子の種類は原子核の陽子の数で決まっている。
天然の原子で一番軽いのが水素、一番重いのがウランで、陽子が92個ある。

原子核の周りを取り囲むように電子が回っている。これは、置き換えると引力で太陽の周りを廻る地球のようなものである。また、電子は「マイナス」の電荷を持っている。

◆同位元素

陽子と中性子の数は、普通は同じである。しかし、陽子の数が同じでも中性子の数が違うことがある。これを同位元素(アイソトープ)と呼んでいる。

ウランも中性子の数が143個と146個のものがある。

中性子が143個のものをウラン235、中性子の数が146個のものをウラン238と呼んでいる。


◆核分裂の仕組みと原子力発電所

 ある種類の原子核に中性子が衝突することにより分裂することを、核分裂という。

原子は原子核と電子から出来ていて、更に原子核は陽子と中性子から構成されている。

原子中の原子核に外から中性子が飛び込んでくると、2つ以上の小さい原子核に分裂する。核分裂はこのような仕組みである。

原子核が核分裂する際には、大きな熱エネルギーを発生する。

さらに、原子核は分裂すると同時に2個から3個の中性子を放出する。この放出された中性子が次々と別の原子核に衝突することにより、核分裂が連続して発生する。核分裂が一定の量を保って連続して起こることを「臨界」と呼んでいる。

核分裂による熱エネルギーを活用しているのが原子力発電である。

原子力発電ではウランを焼き固めたペレットを燃料として使用している。この燃料中のウラン235の原子核に中性子が当たると核分裂が起こり、その時に発生する熱エネルギーで水を温め蒸気を発生させている。


◆核燃料サイクルとは。
 

ウランとて、無限にあるわけでもないし、ましてや日本では採ることができない(厳密に言うと、ごく少量、採れる場所がある)。

 そして天然に存在するウランは、その殆ど(99.3%)が核分裂しにくいウラン、つまり燃えにくいウラン(ウラン238)で、燃えやすいウラン(ウラン235)は0.7%しかない。

原子力発電(軽水炉)はこの燃えやすいウラン(ウラン235)を3~5%程度に濃縮したものを燃料として、原子炉のなで核分裂を起こさせ、その際に発生する熱エネルギーを電気に変えて発電を行っている。

原子炉の中では、燃えにくいウラン(ウラン238)の一部が燃えやすいウラン(ウラン235)の核分裂によって発生した中性子を吸収し、プルトニウム239という物質に変わる(プルトニウム239は原爆に使うことができるので、軍事目的に転用される恐れがある、たとえ、日本が原爆を使わなくても外国に売ったら、原爆の材料を売る「死の商人」になってしまう、というのも、反対派が反対する理由の一つである)。

プルトニウム239も核分裂を起こしやすい物質なので、このプルトニウム239や燃え残ったウラン(ウラン235,ウラン238)などを再び燃料として利用すれば、ウラン資源の消費を節約することが出来る、というのが、核燃料サイクルの考え方である。


◆核燃料サイクルの危険性

 

それでは、一体何が問題なのかといえば、最大の問題は、云うまでもなく、核燃料から放射能が出ることである。

最悪な事態は原子炉がぶっ壊れることで、核物質が空気にさらされて、辺り一面はもとより、何十キロ、何百キロも離れたところまで、放射能が拡散する。要するに原爆が爆発したのと同じ事である。

この最悪の事が現実になったのが、チェルノブイリである。

 もっとも、普通は、原子炉の中で燃えているとき(核分裂を起こしている最中)にも、放射能が発生しているが、厳重に(ということになっている)密閉された原子炉の中でのことなので、安全なのだ、と国や原子力に携わる人々はいう。

 しかし、昨年11月にもこの問題について触れたが、使用済み核燃料から、プルトニウム239や燃え残ったウラン(ウラン235,ウラン238)などを、取り出す(まさにそのプロセスを「再処理」)というのである)ときのほうが、原子炉で核分裂している状態よりも危険なのだ、と原発推進反対派は主張する。

使用済み核燃料といっても、人間がそばに近寄ったら、直ぐに死んでしまうほどの、猛烈な放射能を発しているのであるが、再処理の過程では、どうしても一旦外気に触れざるを得ないというのである。

正直に告白すると、ここのところは、私はなにぶん、ド素人なので、どちらの言い分が正しいのか判断がつきかねる。

◆使用済み核燃料はまた燃やせる。

 さて、再処理した、核燃料をどこで使うか?

ひとつは、普通の原発にある原子炉(軽水炉)でもう一度使う方法である。これを「プルサーマル」という。

もうひとつは、燃えにくいウラン、ウラン238をプルトニウム239へ効率よく転換できる装置で使う方法である。この装置を「高速増殖炉」というのである。


◆高速増殖炉とは何か。

 先に述べたように、天然のウランの中に、核分裂しやすい(燃えやすい)ウラン、ウラン235は、0.7%しかふくまれていない。残りの大部分は核分裂しにくいウランである、ウラン238である。

 しかし、燃えにくいウラン238も、中性子を吸収することにより、核分裂しやすいプルトニウム239変わる性質がある。

また、ウラン235やプルトニウム239にぶつかる中性子のスピードが速いほど、新たに飛び出す中性子の数が多くなる。これが、「高速」増殖炉と呼ばれる所以(ゆえん)である。

 普通の原子力発電所の軽水炉でウラン238に中性子をぶつけて、プルトニウム239を作ることができるが、中性子のスピードが遅いので、消費される燃料と、新たに作り出される燃料の割合(転換比)がさほど大きくないのである。

 これに対して、高速増殖炉では、消費する燃料よりも多い燃料(プルトニウム239)を作り出すことが出来る、という、理論上はそういうことなのだそうだ。だから、「夢のエネルギー源」とか「夢の原子炉」とかいって、国はこれを推進しようとしている。少なくとも表向きはそういうことになっている。


 しかし、日本の唯一の高速増殖炉になりかけた「もんじゅ」は1994年、一旦臨界に達したが、1995年12月に2次系(直接放射能を帯びていないところ)のナトリウムが漏れる、という事故を起こして、それから、約10年、この問題は凍結されていたのである。


◆高速増殖炉では冷却剤にナトリウムを使う。

 

 ナトリウムとはどういうことかというと、普通の原子力発電所の原子炉は軽水炉と呼ばれるとおり、冷却材として普通の水が使われていて、それが核分裂により熱せられるわけだが、高速増殖炉では、中性子のスピードを上げるために、水よりも中性子を吸収しにくいナトリウムを使う。

 ところが、このナトリウムは取扱が難しい物質なのだ。

外に漏れて、水に触れると激しく反応する。(学生時代、理科の授業で実験したことありませんか。私は、化学の先生が、水に少量のナトリウムを落としたら、ボッと火を噴いたのを見て、非常に驚いたことを覚えている。この世に、水に触れて燃えるものがあるとは思わなかったのだ。)


◆諸外国は高速増殖炉の開発をとっくの昔に諦めている。難しすぎるのだ。

 

 安全に運転できれば、確かに、燃やした燃料よりも、それによって新しく出来る燃料のほうが多い、というその点だけを聴くと、たしかに良さそうな気がする。

 しかし、「高速増殖炉」であるから、制御が危険である(核分裂を制御できなくなる可能性が普通の原子炉よりも高い)とか、それ以前に、使用済み核燃料からウランやプルトニウムを取り出すのが、難しくて、非常に危険だというので、アメリカ、イギリス、フランスなどは、高速増殖炉の開発を既に断念しているのである。

 いまだ高速増殖炉なんて云っているのは、日本だけなのだ。

 日本の政治家は、いつもどこか、ボケている。

 そんな危険なものを、日本で、作っていいのか、確かに不安だ。

 福井県知事にはどういう圧力がどここからかかったのだろうか。大体想像はつくが・・・。


◆この事業に関わるスポンサーからの圧力で、テレビは報道できない。

 

12月17日に書いたけれども、河野太郎衆議院議員が暴露するところによると、テレビ朝日が「報道ステーション」で核燃料サイクルの問題点について取り上げようとしたら、スポンサーから猛烈なクレームがきて、断念せざるを得なかったのだという。

 つまり、高速増殖炉を作り直すとなったら、国から受注しそうなメーカーにしてみれば、テレビ朝日が核燃料サイクルの危険性などを報道することにより、世論の反発が高まり、商機を逃すことになりかねない、ということなのだろう。

 しかし、普通の建物、建造物と訳が違うからね。一歩間違えば原爆と同じだからね。

 一週間前のこのニュース、全然騒がれなかったけれども、こういうときには、マスコミは根性を出して、国民に正しい選択をする材料を提示して欲しいものだ。




by j6ngt | 2005-02-15 01:36


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