本田美奈子が基礎から声楽を勉強し直して歌った、フォーレやサンサーンスが美しいのに、失礼ながら驚いた。

◆元々はアイドル歌手だった人ですね。

 

たまには、好きな音楽の話を書きます。

口幅ったい(くちはばったい)言い方ですが、私がクラシック以外の人がクラシックを演奏(歌うことも演奏というのです)をしたのを聴いて、褒めることは、滅多に無いのです。

それは、偏見からではなくて、やはり子供の頃から基礎から積み上げてきた人たちと比較したら、大抵、全然話にならないからです。


◆歌は比較的融通が利く。

 

ピアノやヴァイオリンのプロになろうというのならば、これはもう、絶対に子供の頃からやらないと、だめです。

ソリストになるような人は、ピアノなら小学生のころから、ショパンやリストのエチュード(死ぬほど難しい)をバリバリ弾きます。

ヴァイオリニストになりたい、しかもソリストになりたいなら、同じく小学校の低学年で、メンデルスゾーンの協奏曲など弾けてあたりまえで、技術的にはもっと難しい、パガニーニの24のカプリース(発狂するほど難しい。私なんか、3000年練習しても弾けない)を弾けて当たり前。多分皆さん、例えば、そうだな。東京音大の付属音楽教室の発表会を聴いたら、気絶すると思います。全員、天才です。

ソリストとして、大成するにはそれが、最低レベルです。前提条件です。十分条件ではありません。

 それぐらい天才的でもソリストになれるのは何百人に一人です。

それに比べると、歌は遅くからはじめて良いのです。

というか、そのようにせざるを得ない。

なぜかというと、何せ身体が楽器だから、身体が成長して、できあがらないと、どこまで才能が伸びるか分からないのです。


◆本田美奈子がここまで勉強して上手くなるとは・・・。

 

先日、たまたまテレビで、聞き覚えのある、しかし、以前より遙かに良く声が出ている人がいて、誰かと思ったら、本田美奈子でした。

彼女は、アイドルを辞めて、ミュージカル「ミス・サイゴン」に出ていたけれども、あれは、まだ本当の発声ではありません。一生懸命歌っているが、声が伸びていません。

本当の発声とは、最も声が良く通る(声や音の「抜け」がいい、という表現も出来ます)歌い方です。

 クラシックの声楽というと、人々は何故か、いきんで歌っている、という印象があるらしいけれども、それはとんでもない話です。その正反対です。

上手い人ほど、喉や口周辺のみならず、全身の無駄な力が抜けているのです。

 楽器もそうですが、無駄な力が減るほど、いい音、声が出て、技術の進歩が早まります。

本当に力が抜けて正しい発声を身につけた人の歌は、驚くほど良く響きます。人間の声とは、これほどまでに素晴らしいものか、と驚きます。

 ホールの空気がビリビリ振動するのが分かるのです。勿論マイクなど使わずに。

 本田美奈子が最近、クラシックの色々な曲、「色々」とは、もともと歌ではなく、オーケストラ曲の一部とか、器楽独奏曲などに歌詞をつけて歌ったCDを出していることを知りました。

最近出たばかりの2枚目、というCD。2曲目は有名なチェロの曲、サンサーンスの「白鳥」です。

チェロの響きをこれぐらい見事に弾き出している曲は、珍しいのですが、音域が広い。歌うのは、かなり難しい。それを、歌っている。歌詞がちょっと私には余計なのですが、本田美奈子さんの演奏自体は大変素晴らしい。

それから、昨年出した(知りませんでしたが)AVE MARIAというCD。

この10曲目にフォーレのシチリアーノという曲があります。

フォーレはフランスの作曲家。シチリアーノは組曲「ペレアスとメリザンド」という、メーテルリンクの書いた物語を、フォーレがオーケストラを用いて音楽で表現した作品の中の1曲です。

オリジナルではオーケストラでフルートがこのメロディーを吹くのですが、余りにも美しいので、色々な楽器で好んで演奏されます。

この旋律は美しい。気が遠くなるほど美しい。

美しいけれど、歌うのは大変です。音程がとても難しいのです。似たフレーズが繰り返されるのですが、半音の位置が毎回少しずつ違う。

耳が良くないひとは、絶対歌えないです。

耳がよくて、相当必死に練習しないと歌えないと思います。

どんな曲か知りたかったら、Yahoo!で「シチリアーノ フォーレ」を検索します。

 検索結果が出たら、右上で「音声」を選択します(音声検索というのがあるのですね)。

 そうすると、本田美奈子は聴けないが、フルートなどで演奏したMP3やMIDIがかなり出てきますので、聴いてみると良いと思います。

いやー、それにしても、本田美奈子はよく勉強したなあ・・・・。これは、大したものです。

 勿論、オペラの専門家と比べたら、まだまだだけれども、それは、酷だ。

 所謂芸能人で、一念発起して、ここまでの発声を体得した人は他にいないと思います。

今年、ホルストの「惑星」から「木星」のしかもさわりの所だけに歌詞をつけて歌っていた女の子がいますね?あんなのより、ずっとクラシック。感心しました。

 クリスマスにどうぞ。


by j6ngt | 2004-12-15 01:05 | 音楽


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